コラム

第2回 育児休業改正について

今回は、前回に引き続き育児休業の改正についてのコラムです。

令和4年10月、令和5年4月の改正内容と、これらの改正によって必要に応じて締結しておくべき労使協定についてご紹介いたします。

R4.10.1施行

e. 産後パパ育休の創設

f. 育児休業の分割取得

g. 1歳到達日後の育児休業の見直し

e. 産後パパ育休の創設

社内研修資料について|男性の育休に取り組む|育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト (mhlw.go.jp)

新しい育児休業「産後パパ育休」が創設されます。

今回の改正前においては、出生後8週以内に取得する育児休業を「パパ休暇」と呼んでおり、パパ休暇と通常の育児休業は別物と考え、パパ休暇を1回、通常の育児休業を1回という形で休業を取得することができます。

改正後は、パパ休暇は廃止されます。

これに代わるような形で「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設されます。

産後パパ育休は出生後8週以内に父親が2回まで分割して育児休業を取得できる制度です(合計で最大4週間です)。産後パパ育休を取得していても、産後8週以降の通常の育児休業は別途取得することができます。

また、産後パパ育休は申出期限が2週間前までとされており、通常の育児休業に比べ、よりギリギリな申出が可能となります。(通常の育児休業の申出期限は1か月前まで)

原則は2週間前までの申出期限ですが、労使協定を締結することでこの申出期限を1か月前までに延長することが可能です。

詳細についてはのちほど紹介します。

f. 育児休業の分割取得

そして、出生後8週を超えた後の通常の育児休業についても1歳の誕生日の前日までの期間において2回に分割して取得することができるようになります。(今までは1回きりが原則でした。)

ですので、父親においては、産後パパ育休も含めて最大4回に分割して育児休業を取得することができ、たとえば母親の職場復帰のタイミングで父親が育児休業を取得するなど、従来よりも柔軟な取得が可能となります。

ちなみに、出生後8週を超えた後の育児休業については母親も同様に2回まで分割して取得が可能です。

g. 1歳到達日後の育児休業の見直し

保育所等に入所を希望しているが入所できないなどの事情がある場合、1歳に到達した日後であっても育児休業を延長できる制度があります。

法改正前では、この延長の休業開始日が下記のように決まっていました。

  1. 1歳~1歳6ヵ月の休業:1歳に達した日の翌日
  2. 1歳6ヵ月~2歳の休業:1歳6ヵ月に達した日の翌日

今回の改正によってこの開始日が柔軟化されます。

具体的には、原則は現行のままですが例外として、「配偶者が育児休業をしている場合」は、「配偶者の育児休業終了予定日の翌日以前の日」を開始予定日とすることができるようになります。

つまり、配偶者の育児休業とバトンタッチするか、重複期間を持たせる形での取得が可能となったということです。

≪R5.4.1施行≫

h. 育休の取得状況の公表(労働者が1000人超の事業主に義務付け)

従業員1000人超の企業を対象に、育児休業の取得の状況について年1回、公表が義務付けられます。

公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。

ここでポイントなのは、令和5年4月1日以後に開始する事業年度から対象となりますが、公表するものは「公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度」における取得率です。

例えば、事業年度が4月1日~3月31日の企業の場合、令和4年4月1日~令和5年3月31日の状況を公表することになるため、令和4年4月からの取得状況の把握が必要となります。

ちなみに政府は、2025年までに男性の育児休業取得率を30%にすることを目標に掲げています(令和元年12月 閣議決定「第2期『まち・ひと・しごと・創生総合戦略』」)

必要な労使協定

産後パパ育休(出生時育児休業)中に勤務させる場合

産後パパ育休中に労使の合意と労使協定の締結があれば、従業員を勤務させることが可能です。

この場合の流れは下記のとおりです

  1. 労使協定において産後パパ育休中に就業できる従業員を定める
  2. 産後パパ育休を申し出た従業員が就業可能日・時間帯、その他の労働条件(勤務場所等を含む)を申し出る。(この場合の就業可能時間帯は所定労働時間内に限ります。)
  3. 事業主が②の範囲内で日時やその他の労働条件を提示する。
  4. 従業員が③の内容に同意をする。
  5. 事業主が④の同意を得た旨、就業させることとした日時、その他の労働条件を従業員に通知する。

ただし注意事項がいくつかあります。

▼事業主が就業を命じることはできない

そもそも原則として、育児休業中は就労させることは想定していないので、事業主からの一方的な求めに応じさせ就労させることはできません。

また、事業主は、育児休業中に就労しなかったことを理由として、不利益な取り扱い(人事考課において不利益な評価をするなど)を行ってはならないと定められています。(育児・介護休業法第10条)

▼就業の日数・時間の上限がある

産後パパ育休中の就業は下記の範囲内で行うことと定められています。

①就業日の合計が、産後パパ育休期間中の所定労働日数の2分の1以下

②労働時間の合計が、産後パパ育休期間中の所定労働時間の合計の2分の1以下

③産後パパ育休開始予定日、終了予定日を就業日とする場合は、その日の労働時間数は所定労働時間に満たない時間であること

▼育児休業給付との相関

雇用保険による育児休業給付は産後パパ育休期間も対象となりますが、この給付を受けるためには就業日数・時間は下記の範囲内であることが要件となるので注意が必要です。

【休業日数が28日間の場合】

就業日数が10日(10日を超える場合は就業している時間が80時間)以下であること

また、休業日数が28日よりも短い場合にはその日数に比例してこの条件日数・時間が短くなります。

産後パパ育休(出生時育児休業)の申出を2週間前から1か月前とする場合

産後パパ育休は、休業開始予定日の2週間前までに申出ることとされています。通常の育児休業であれば1か月までに申し出る必要があるため、出生時育児休業ではよりギリギリでの申し出がOKになったということです。

これにより、社内でのシフトの調整や業務の引継ぎ等の早急な対応が必要となりますが、難しい場合は、労使協定を締結することでこれを現行と同じ1か月前までとすることができます。

その場合、厚労省令で定められた職場環境の整備等の措置を労使協定で定める必要があります。

▼労使協定で定める職場環境の整備等の措置は次のa~cです。

a.次に掲げる措置のうち2以上の措置を講じること

・雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施

・育児休業に関する相談体制の整備

・雇用する労働者の育児休業の取得に関する事例の収集および当該事例の提供

・雇用する労働者に対する育児休業に関する制度および育児休業の取得の促進に関する方針の周知

・育児休業申出をした労働者の育児休業の取得が円滑に行われるようにするための業務の配分または人員の配置に係る必要な措置

b.育児休業の取得に関する定量的な目標を設定し、育児休業の取得の促進に関する方針を周知すること。

c.育児休業申出にかかる当該労働者の意向を確認するための措置を講じたうえで、その以降を把握するための取組みを行うこと

また、制度開始後の変更の場合、就業規則の変更も必要となるため早めの対応がカギとなります。

入社1年未満のものを育児休業取得の対象外とする場合(対象を有期雇用労働者のみとし、無期雇用労働者と不合理な待遇差が生じないよう注意が必要)

前回のコラム記事でも述べましたが、R4.4.1の改正で育児休業取得の要件から「有期雇用労働者において入社1年以上であること」が撤廃されました。

これによって、有期雇用労働者も、例えば入社から間もない場合であっても、無期雇用労働者と同様に育児休業が取得できるようになりました。

ただし、労使協定を締結することによって「引き続き雇用された期間が1年未満の者」を育児休業取得できる者から除外することができます。 この場合に注意が必要なのは、この労使協定の対象労働者を有期雇用労働者のみとすることはできないという点です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

子育てパパ支援助成金

今回のコラムはここまでです。様々な改正内容の中でも産後パパ育休は特に新設の制度のため、社内体制の整備、労働者への周知が急務と考えられます。

就業規則や社内書式、労使協定のことなど、お困りのことがございましたら社会保険労務士法人clovicまでぜひお気軽にお問い合わせください。

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