コラム

算定基礎届について

算定基礎届とは

社会保険料(健康保険・厚生年金保険)は、月の報酬を等級ごとに区切った「標準報酬月額」に保険料率を掛けることにより計算します。

この標準報酬月額と、実際の毎月の給与額とに大きなズレが生じないように、1年に一度見直し作業が行われます。

7月1日現在で使用している全ての被保険者に4~6月に支払った給与を、「算定基礎届」によって届出し、この届出内容に基づき、毎年1 回標準報酬月額が決定されます。これを「定時決定」といいます。

「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月に適用され、保険料の計算や将来受け取る厚生年金給付の基礎にも使われる数字ですので、とても重要な手続き業務です。

対象者の範囲

算定基礎届の対象者は、7月1日現在で被保険者となっているすべての従業員です。休職中や長期の欠勤、育児休業、介護休業などで会社を休んでいる人も提出の対象となります。

例外として、以下の要件に該当する場合は、対象外となります。

  • 6月1日以降に被保険者(資格取得)となった人
  • 6月30日以前に退職した人
  • 7月に随時改定の月額変更届を出す人
  • 8 月または 9 月に随時改定が予定されている人(別途「月額変更届」の提出が必要)

報酬

標準報酬月額のもととなる報酬には、賃金、給料、俸給、手当、賞与などの名称を問わず、 労働者が労働の対償として受ける全てのものが含まれます。また、現物で支給するものも含みます。

〇対象となる報酬

◆金銭(通貨)で支給されるもの

  • 基本給(月給、日給、時間給、歩合給、など)
  • 通勤手当
  • 家族手当
  • 住宅手当
  • 役職手当
  • 残業手当
  • 休日手当
  • 継続支給する見舞金
  • その他の手当
  • 年4回以上支給の賞与、決算手当など

◆現物で支給されるもの

  • 通勤のための定期券や回数券
  • 食事、食券
  • 社宅、寮
  • 被服(制服・作業着以外)
  • 自社製品など

〇対象とならない報酬

  • 慶弔金(結婚や出産祝いなど)
  • 見舞金
  • 公的保険給付(傷病手当や休業補償給付など)
  • 退職金、解雇予告手当
  • 出張旅費、交際費
  • 年3回以下支給の※賞与、決算手当など
  • 制服、作業着
  • 食事で本人の負担額が一定額以上の場合

※賞与 名称は○○手当であっても「臨時に支払われたもの」「賞与的な支払いを手当として行ったもの」については、社会保険では賞与として扱われます。賞与は、別途「賞与支払届」として届出をします。

現物給与の取り扱い

①通勤定期券等

通勤手当を、金銭ではなく定期券や回数券で支給している場合は、現物給与としてその全額を報酬とします。3 ヵ月、6 ヵ月単位で支給する通勤定期券は、1 ヵ月あたりの額を算出して報酬とします。

②食事で支払われる報酬等

事業主が被保険者に食事を支給している場合は、都道府県ごとに厚生労働大臣が定める価額に換算して報酬を算出します。 食事代の一部を被保険者が負担している場合は、上記価額から本人負担分を差引いた額を報酬とします。ただし、被保険者が当該価額の 2/3 以上を負担する場合は報酬にはなりません。

③住宅で支払われる報酬等

事業主が被保険者に社宅や寮を提供している場合は、都道府県ごとに厚生労働大臣が定める価額に換算して報酬を算出します。寮費などその一部を被保険者が負担している場合は、厚生労働大臣が定める価額から本人負担分を差し引いた額を報酬として算入します。

④食事および住宅以外の報酬等

食事および住宅以外の報酬等の価額は、労働協約に定めがある場合は、その価額を「時価」として取り扱い、労働協約に定めがない場合には実際の費用を「時価」として取り扱います。

標準報酬月額の算出方法と算定基礎届の記入方法

【支払基礎日数】

支払基礎日数とは、報酬の支払い対象となった日数のことをいいます。

時給制・日給制の場合は、出勤日数(有給休暇も含む)が支払基礎日数となります。 月給制・週給制の場合は、出勤日数に関係なく暦日数が支払基礎日数となります。

ただし、欠勤した日数分だけ給料が差し引かれる場合は、就業規則、給与規程等に定めた日数(所定労働日数)から、欠勤日数を控除した日数が支払基礎日数となります。

【報酬月額と標準報酬月額】

実際に4・5・6月に支払われた報酬の合計を算定対象月数(支払い基礎日数17日以上)で割った平均額を“報酬月額”といいます。これを算定基礎届により届け出ます。

標準報酬月額は報酬月額をもとに決定されます。報酬月額を健康保険と厚生年金保険それぞれの等級で割り振り、その等級に該当する金額を標準報酬月額とします。

一般的には、月の勤務日数が少ないと適切な平均月額報酬を算定できないため、支払基礎日数が17日未満の場合は算定対象外となります。

では、ケースごとに見ていきましょう

ケース①  一般的な例

●支払基礎日数が4・5・6月とも17日以上の場合

⇒ 3ヵ月が対象。4・5・6月に支払われた給与の合計を「3」で割った額が報酬月額となります。


ケース②  支払基礎日数に17日未満の月があるとき

●支払基礎日数に17日未満の月がある場合

支払基礎日数が17日以上の月を対象とします。例えば5月の支払い基礎日数が17日未満であれば、5月は除き6月と7月の報酬の合計をその月数「2」で割って、報酬月額を算出、記入します。


ケース③  短時間就労者(パートタイマー等)

●支払基礎日数が17日以上の月がある場合

支払基礎日数が17日以上の月を対象とします。例えば17日以上の月が6月のみであれば、6月に支払われた給与の額が報酬月額となります。

●支払基礎日数がすべて17日未満だが15日以上の月がある場合

支払基礎日数が15日以上の月のみを対象とします。たとえば4月は15日未満、5月・6月が15日以上なら、5月と6月に支払われた給与の合計額を「2」で割った額が、報酬月額となります。

用語の解説

  • 短時間労働者

平成28年10月の適用拡大によって新たに社会保険の加入対象となったパートタイマー等の事です。週所定労働時間20時間以上、雇用期間1年以上、月額給与88千円以上、学生でない事の要件をすべて満たす人です。

  • 短時間就労者

従来から社会保険の適用対象であったパートタイマー等の事です。1 週間の所定労働時間および 1 ヵ月の所定労働日数が、通常の労働者と比較して 4 分の3 以上である被保険者をいいます。


ケース④  短時間労働者(パートタイマー等)

支払基礎日数が3ヵ月とも11日以上の場合

⇒3ヵ月が対象となります。

●支払基礎日数に11日未満の月がある場合

支払基礎日数が11日以上の月を対象とします。たとえば4月は11日未満、5月・6月が11日以上なら、5月と6月に支払われた給与の合計額を「2」で割った額が、報酬月額となります。

短時間労働者とは…

1 週間の所定労働時間が通常の労働者の 4 分の3未満、1 ヵ月の所定労働日数が通常の労働者の 4 分の 3 未満、またはその両方の場合で、次の要件を全て満た場合に該当します。

  1. 週の所定労働時間が 20 時間以上あること
  2. 雇用期間が 1 年以上見込まれること(※)
  3. 賃金の月額が 8.8 万円以上であること
  4. 学生でないこと
  5. 特定適用事業所または国・地方公共団体に属する事業所に勤めていること

(※)制度改正により本要件は撤廃され、令和 4 年 10 月からは通常の労働者と区分なく「雇 用期間が2ヵ月を超えて見込まれること」が要件となります。


ケース⑤  給与の支払対象となる期間の途中から入社したとき

給与の支払対象となる期間の途中から資格取得したことにより1ヵ月分の給与が支給されない場合

⇒1ヵ月分の給与が支給されない月(途中入社月)を除いた月を対象とします。


ケース⑥  賞与などが年4回以上支給されたとき

前年の7月からその年の6月までに4回以上の賞与が支払われた場合

⇒支払われた賞与の合計額を12ヵ月で割った額を各月の報酬に加え、報酬月額を算出します。


ケース⑦  一時帰休による休業手当が支給されているとき

●7月1日時点で一時帰休の状況が解消していない場合

⇒一時帰休による休業手当等が支払われた月のみで算定するのではなく、通常の給与を受けた月もあわせて報酬月額を算出します。

●7月1日時点で一時帰休の状況が解消している場合

⇒4、5、6月のうち、休業手当を含まない月を対象とします。 なお、4、5、6月いずれにも休業手当が支払われている場合は、一時帰休により低額な休業手当等 に基づいて決定または改定される前の標準報酬月額で決定します。


ケース⑧  一般的な方法では算定できないとき

4、5、6月のいずれも支払基礎日数が17日未満(短時間就労者については15日未満、短時間労働者については11日未満)、または病気等による欠勤、育児休業や介護休業等により4、5、6月のいずれも報酬を全く受けない場合

従前の標準報酬月額で決定します


ケース⑨  一般的な方法で算定すると著しく不当になるとき

●3月以前にさかのぼった昇給の差額分または3月以前の給与を4、5、6月のいずれかの月に受けた場合

⇒3月以前の昇給差額分(または遅配分)を除いた報酬月額の総計から報酬月額を算出します。

●4、5、6月のいずれかの月の給与が7月以降に支払われる場合

⇒7月以降に支払われる月以外の月を対象月とします。

●低額の休職給を受けた場合(病気などによる休職の場合)

⇒休職給を受けた月以外の月を対象月とします。

●「4、5、6月の給与の平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から 算出した標準報酬月額」に2等級以上の差が生じ、その差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合

⇒ 前年の7月から当年の6月までの給与の平均額から算出した標準報酬月額で決定することができます。


下記より抜粋

いかがでしたか?

様々なパターンがあり、判断に悩む点も多いかと思われます。

何かお困りのことがございましたら、clovicまでお問い合わせください。

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