労使協定とは?
労働者と使用者、つまり社員と会社との間で締結される、書面による協定のことを一般的に「労使協定」としています。これにより法定義務の免除や免罰の効果を発生させることができます。
労働基準法上の労使協定、育児介護休業法上の労使協定を解説します。
また、各書類ダウンロードに労使協定のひな型をおいております。こちらの方もご覧ください。
1.貯蓄の管理に関する協定(貯蓄金管理協定)
~社内預金をするため、賃金控除して社内積立する場合~
いわゆる任意貯金のことです。労働契約に付随して労働者に社内預金をさせることは、強制貯金の禁止を定めた労働基準法18条に違反します。
会社は、労使協定を締結し、これを労働基準監督署長に届け出る事により、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理することができるようになります。
2.賃金控除に関する協定
~賃金全額払いの例外で、親睦会費や旅行積立金を給与から天引きする場合~
会社は賃金の全額を支払わなければいけませんが、労使協定がある場合は、賃金全額払の原則の例外として、「賃金の一部控除」が認められます。親睦会費、旅行積立金等が該当します。
所得税、社会保険料、労働保険の保険料の徴収等などの控除は、「法令の定めによる場合」に該当し、賃金全額払いの原則に反しません。
3.一斉休憩の適用除外に関する協定
~休憩時間の一斉付与の例外で、交代制の休憩を適用する場合~
休憩時間は原則として労働時間の途中に一斉に与えないといけません。
労使協定を締結することで、この規定を除外することができます。
官公署、接客娯楽業、通信業、映画・演劇業、金融・広告業、運輸交通業、保健衛生業、 商業は、休憩時間を一斉に与える必要はありません。
4.事業場外労働に関する協定
~直行直帰の営業活動等や具体的な指示のないテレワークの場合~
労働者が仕事の全部もしくは一部を社外で行い、労働時間を算定しがたい場合に、協定で定めた時間を労働したものとみなす制度です。
一般的には記事の取材、営業活動等外勤を主たる業務とする労働者になります。実際の労働時間を把握することができる場合は、労働時間の算定がしがたいとはいえないため、みなし労働時間を適用することができません。
5.専門業務型裁量労働制に関する協定
~みなし労働時間制の一つで、労働時間管理を従業員本人に委ねた場合~
専門業務に従事する労働者に、業務の遂行の手段及び時間配分の決定を委ね、労働時間を「実労働時間ではなく、決められた一定の時間働いたもの」とみなす制度です。
システムエンジニアや建築士等の厚生労総省令で定める19業務が対象となります。
6.1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定
~1ヶ月を平均して1週40時間(特例対象事業44時間)勤務にする場合~
労使協定又は就業規則によって採用する制度です。
法定労働時間を1か月以内の労働時間を平均し、1週間あたりの労働時間が40時間以内になるようにするものです。特例対象事業(美容室や医療クリニック等)では1週間あたり44時間以内とする事が可能です。
7.1年単位の変形労働時間制に関する協定
~1年を平均して1週40時間勤務にする場合~
必ず労使協定が必要です。また、特例対象事業であっても1週間平均の労働時間の限度は「40時間」となります。
比較的、季節等によって繁閑の差がある業種(ホテル、建設業等)で採用されています。
8.1週間単位の非定型変形労働時間制に関する協定
~1週間を平均して40時間勤務にする場合~
日ごとに著しい繁閑の差がある小売業、旅館、料理、飲食店で採用されています。
労使協定の届け出が必要(有効期間はありません)な事と、労働者の人数が30人未満の事業所にかぎられています。
9.フレックスタイム制に関する協定
~フレックスタイム制を適用する場合~
変形労働時間制の1つです。最長で3ヵ月以内の一定期間の総労働時間を定め、労働者が日々の始業時間・就業時間を自分で決めて労働することができます。
対象となる業務や労働者の制限もなく、ライフスタイルに応じた柔軟な働き方ができるようになります。
10.時間外・休日労働に関する協定
~残業、休日出勤をさせる場合~
時間外・休日労働の取り決めに関する労使協定のことです。
一般的に36協定「サブロク協定」と呼ばれています。通常の36協定の上限である「月45時間・年360時間」を超え、例外的な時間外労働を可能にするのが「特別条項付き36協定」です
私達が労務管理する上で、とても重要な協定になります。
11.企画業務型裁量労働制に関する決議届
~ホワイトカラーの裁量労働制を導入する場合~
事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者を対象とし、業務遂行の方法を大幅に労働者に委ねる必要がある場合に、労働者の1日の労働時間をその実労働時間にかかわらず、労使委員会で定めた時間労働したものとみなす制度です。
導入するにあたっては、必要とされる事項を決議する労使委員会を設置する必要があります。
12.代替休暇に関する協定
~月60時間超の残業に代替休暇を与える場合~
代替休暇とは、1か月60時間を超える時間外労働を行わせた労働者について、法定割増賃金の支払いに代えて与える有給の休暇です。
代替休暇制度を導入するためには、労使協定を締結する必要があります。
13.計画年休に関する協定
~年休を計画的に消化させる場合~
労働者が有給休暇を取得する日を、あらかじめ企業が指定できる制度のことを「計画年休」と言います。
有給休暇の付与日数から5日間を除いた日数分を指定できます。
計画年休制度制度を導入するためには、労使協定を締結する必要があります。
年5日の有給休暇義務化後は、中小企業で比較的採用されています。
14.時間単位年休に関する協定
~年休を1時間単位で消化する場合~
時間単位年休は、1年に5日を上限として取得できます。
時間単位年休の導入や、労働者の時間単位年休の取得は、義務ではありません。
一方労働者からのニーズも高く、ワークライフバランスの充実が図れます。
有給の管理方法が複雑になりますので、IT勤怠等の導入は必須かと思います。
15.年次有給休暇中の賃金
~有給休暇の取得日の賃金計算をする場合~
労働基準法上3つの方法が認められています。
有給休暇期間の賃金算出方法については、就業規則等の定めにより、「通常の賃金を支払う」、「平均賃金を支払う」又は労使協定に基づく「健康保険法の標準報酬日額」になります。
16.育児休業、時間外免除、短時間勤務の適用除外に関する協定
~育児休業等の適用除外を設ける場合~
育児・介護休業法で定められている育児支援制度には、育児休業制度、短時間勤務制度などさまざまなものがありますが、それぞれの制度には利用対象の条件が設定されています。
労使協定により取得できないケース
・雇用期間が1年未満
・申し出から1年以内に雇用関係が終了する
・週の所定労働日数が2日以下
労使協定により短時間勤務が取得できないケース
・1つの事業主に連続して雇用された期間が1年未満
・週の所定労働日数が2日以下
・勤務内容からみて、短時間勤務が難しい
労使協定により所定外労働の免除が認められないケース
・1つの事業主に連続して雇用された期間が1年未満
・週の所定労働日数が2日以下
17.介護休業の適用除外に関する協定
~介護休業の適用除外を設ける場合~
労使協定により取得できないケース
・入社1年未満の労働者
・申出の日から93日以内に雇用期間が終了することが明らかな労働者
・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
18.看護休暇、介護休暇の適用除外に関する協定
~看護・介護休暇の適用除外を設ける場合~
労使協定により取得できないケース
・1つの事業主に連続して雇用された期間が6カ月未満
・週の所定労働日数が2日以下