コラム

年収の壁・支援強化パッケージ/事業主の証明による被扶養者認定の円滑化

「年収の壁・支援強化パッケージ」の詳細解説、今回は事業主の証明による被扶養者認定の円滑化について解説します。

【事業主の証明による被扶養者認定】

パート・アルバイトで働く方は、年収が130万円以上になると自ら国民年金・国民健康保険への加入が必要となり保険料負担が生じます。これを避けたいがために就業調整をしてしまうのが「130万の壁」です。

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、「130万の壁」への当面の対応策として打ち出されました。

パート・アルバイトで働く方が繁忙期に労働時間を延長したなどにより収入が増えたとしても、「一時的な収入変動」である旨を事業主が証明することによって引き続き扶養に入り続けることが可能になります。

◆いつから適用される?

今回の措置は、令和5年10月20日以降の被扶養者認定と被扶養者の収入確認において適用されます。それより前の被扶養者認定等に遡って適用されることはありません。

◆「一時的な収入変動」と認められるのはいくらまで?

一時的な収入変動の範囲については、下記の理由により明示されていません。

  • 具体的な上限額を設けるとそれが新たな「年収の壁」になりかねない
  • 一時的な事情によるものかどうかを収入金額のみで判断することが困難である

従って、雇用契約書等を踏まえつつ、その収入増が一時的なものなのかどうなのかを各保険者において判断することになります。

◆事業主の証明を用いるのは連続2回まで

事業主の証明による被扶養者認定の円滑化は、あくまでも 「一時的な事情」として認定を行うことから、同一の者について原則として連続2回までが上限とされます。

保険者が被扶養者の収入確認を年1回実施する場合は、「連続2回」とは連続する2年間の各年の収入確認において事業主の証明を用いることが「連続2回」になります。

◆対象者は配偶者だけではない

対象は配偶者(国民年金の第3号被保険者)だけではなく、社会保険の被扶養者、新たに被扶養者として認定を受けようとする者が対象となります。

学生も対象になるほか、被扶養者が60歳以上である場合や障害者である場合の収入要件となる「年収180万円未満」の判定にも用いられます。

 フリーランスや自営業者など、雇用関係にないものは対象となりません。しかし、フリーランスとしての収入と給与収入の両方がある者の給与収入が一時的な収入変動で増加した場合には、対象となりえます。

事業主の証明書は様式がある

事業主の証明は、被扶養者認定や毎年の被扶養者の収入確認の際に、被扶養者を雇用する事業主から取得し、被保険者が勤務している会社等を通じて保険者に提出します。
必要な記載事項は、厚生労働省から様式が定められています。

被扶養者が複数月の事業所で働いている場合

被扶養者が複数の事業所で勤務している場合は、一時的に年収130万円以上となった主たる要因である勤務先から事業主の証明を取得する必要があります。

また、複数の事業所でそれぞれ一時的な収入の増加がある場合には、それぞれの事業所から事業主の証明を取得することになります。

「事業主の証明による被扶養者認定の円滑化」は、企業の事情、労働者の希望に応じた働き方を後押しするために作られた仕組みです。この仕組みにより、企業側は労働力の確保、労働者は自身の希望に応じた働きやすい環境が整備されると考えられます。

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