コラム

年収の壁・支援強化パッケージ/年収の壁対策の概要

年収の壁とは

年収が一定額を超えると「社会保険料の負担」が生じて手取りが減る現象を指します。

社会保険料負担の発生や、会社等で支給される「配偶者手当」がもらえなくなることによる手取り収入の減少を理由として、働く意欲が低下したり、働き方を変えたりする人が一定数存在します。

年収の壁は大きく分けて①税金の壁 ②社会保険の壁 の2種類が存在します。

税金の壁

  1. 100万円以上…住民税課税
  2. 103万円以上…所得税課税
  3. 103万円以上…配偶者控除
  4. 150万円以上…配偶者特別控除
  5. 201万円以上…配偶者特別控除適用なし

社会保険の壁

  1. 106万円以上…社会保険加入対象
          ※1 特定適用事業所
  2. 130万円以上…社会保険扶養対象外

それぞれの詳細は、下部で解説します。

年収の壁・支援強化パッケージ

政府は、106万円・130万円の壁を意識せずに働くことが可能となるよう、年収の壁対策として、以下の3つの施策を

世帯主の扶養内で働く方の中には、自身の収入が一定額を超えることなった場合の社会保険料負担等により手取り収入が減少してしまうことを避けるため労働時間を調整しているという方が多く存在します。

企業側の人手不足という問題も根強く、厚生労働省は遂に扶養内で働く労働者が年収の壁を意識せずに働くことができる環境づくりを後押しするための施策として「年収の壁・支援強化パッケージ」を公表しました。

今回はその中でも注目度の高い「106万円の壁への対応」および「130万円の壁への対応」の概要をお伝えします。

106万円の壁への対応

(1)キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

キャリアアップ助成金の新設コースです。
短時間労働者が被用者保険の適用となる際、労働者が手取り額の減少を気にせず働けるよう労働者の収入を増加させる取り組みを行った事業主に対しての助成が行われます。
収入の増加は、
1. 手当等支給メニュー 2. 労働時間延長メニューに分けられ、該当する要件に合わせ助成額は変動します。

※10月下旬予定で、キャリアアップ助成金の制度見直しが行われますが、「令和5年10月1日から適用する。」となっております。


(2)社会保険適用促進手当

短時間労働者の被用者保険適用促進のため、現在被用者保険が適用されていない労働者が新たに適用となった場合労働者の保険料負担軽減のために「社会保険適用促進手当」を支給することができます。
また、「社会保険適用促進手当」は給与や賞与とは別に支給するものとし標準報酬月額や標準賞与額の算定には算入されません。

要件は3点あり、

  1. 対象者は標準報酬月額が10.4万円以下であること
  2. 報酬に算入しない手当の額は、被用者保険適用に伴い発生した本人負担分の保険料相当額を上限とする
  3. 対応期間の上限は最大2年間とする

と定められています。

130万円の壁への対応

現在被扶養者の認定は前年の課税証明や給与明細等で130万円未満か否かを確認し行われていますが、仮に130万円を超えていた場合であってもそれが一時的なものであり、事業主により一時的な労働時間延長によるものである証明を行うことで被扶養者の範囲内である認定が可能となります。
ただし、同一の者について原則連続2回が上限とされています。

配偶者手当への対応

収入要件がある配偶者手当を受給している会社に対して、配偶者手当の見直し促進をしていく。
見直しの手順をフローチャートで示す等わかりやすい資料を作成・公表する。
(企業の配偶者手当の見直し促進)

このほか、設備投資等により事業場内最低賃金の引上げに取り組む中小企業等に対する助成金(業務改善助成金)の活用も促進する。

税金の壁

1. 住民税課税

年収がおおよそ100万円以上となると、住民税の納税義務が課されます。
また年金も「雑所得」として対象となります、ただし遺族年金や障害年金は対象となりません。

2. 所得税課税

年収が103万円を超えると、上記住民税に加えて所得税が課されます。
また月収が約88,000円を超え扶養親族等がいない場合は給与支給時に所得税控除が行われます。
所得税額は、その月の社会保険料控除後の給与額と扶養人数に応じて、所得税額表を元に計算されます。

また、月々の所得税は大まかな額が徴収されるため年末調整や確定申告にて正式な所得税を確定し、還付や徴収が行われることで年間の所得税の清算が行われます。

3. 配偶者控除

納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、所得控除が受けられます。
例えば配偶者の所得が給与所得だけで、且つ収入が103万円以下の場合所得金額は48万円となるため、配偶者控除の対象となります。
納税者本人の合計所得金額および控除対象となる配偶者の年齢にあわせた控除額が定められています。

4. 配偶者特別控除

配偶者特別控除は、配偶者の所得が48万円を超えるため上記配偶者控除の適用が受けられない場合も、所得金額に合わせて一定金額の所得控除が受けられる制度です。
納税者本人の合計所得金額および配偶者の合計所得金額にあわせた控除額が定められています。

5. 配偶者特別控除適用なし

年収が201万円を超えると上記配偶者特別控除についても適用されません。

  • 3,4の配偶者控除及び配偶者特別控除については、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は適用されません。

社会保険の壁

1. 社会保険加入対象 ※1 特定適用事業所

特定適用事業所※1で働く労働者が次の条件を全て満たす場合は社会保険の加入対象となります。

  1. 所定労働時間が週20時間以上
  2. 月額賃金が8.8万円以上
  3.  2ヶ月を超える雇用見込みがある
  4. 学生ではない

条件の一つである「月額賃金が8.8万円以上」は、年収に換算すると約106万円となります。

  • 特定適用事業所とは、1年のうち6月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者総数が101人以上(2024年10月以降は51人以上)となることが見込まれる企業

2. 社会保険扶養対象外

年収が130万円を超えることが見込まれる場合、自身が社会保険への加入条件を満たしていない場合でも世帯主の扶養の対象外となります。
この場合自身で健康保険及び年金制度に加入する必要があります。
世帯主の扶養から外れた場合世帯全体での手取り額が減少してしまうパターンもあるため、労働者の働き方の制限につながり人手不足の原因の1つとなっていました。

具体策、対応策については下記資料をご参照ください。

今回公表された厚生労働省による取り組みは、まだ詳細が発表されていない部分も多くありますので、詳細が分かり次第当HPで順次お知らせいたします。

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