第2回 月60時間超残業について~代替休暇~
1ヶ月60時間を超える法定外労働時間を行った労働者の「健康を確保する」ため、引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇『代替休暇』を付与することができます。
今回は、この『代替休暇』について解説していきます。
ポイント
代替休暇制度導入に当たっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要です。
労使協定で定める事項
1)代替休暇の時間数の具体的な算定方法
(1ヶ月の法定時間外労働時間数-60時間)×換算率=代替休暇の時間数
換算率=
[代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増賃金率]
-[代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率]
例
法定外時間労働100時間
代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされている割増率:1.5
代替休暇を取得した場合に支払うこととされている割増賃金率:1.25
(100時間-60時間)×換算率(1.5-1.25)=10時間……代替休暇の時間数
2)代替休暇の単位
まとまった単位で与えることによって労働者の休息の機会を確保する観点から、「1日」「半日」「1日または半日」のいずれかによって与えることとされています。
※半日については、原則労働者の1日の所定労働時間の半分ですが、厳密に所定労働時間の2分の1とせずに、午前:3時間半、午後:4時間半とすることも可能です。その場合は労使協定に定めておく必要があります。
<端数の時間がある場合>
- 例
- 1日の所定労働時間:8時間、代替休暇の時間数:10時間
①1日(8時間)の代替休暇を取得+端数(2時間分)は割増賃金で支払う方法
②1日(8時間)の代替休暇を取得+端数(2時間分)+他の有給休暇(2時間)を合わせて半日休暇にする方法
3)代替休暇を与えることができる期間
代替休暇は、特に長い時間外労働を行った労働者の休息の機会の確保が目的なので、一定の近接した期間内に与えられる必要があります。
法定時間外労働が1ヶ月60時間を超えた月の末日の翌日から2か月間以内の期間で与えることを定めています。
※期間内に取得されなかった→割増賃金支払義務はなくならない
※期間が1ヶ月を超える→1か月目の代替休暇+2ヶ月目の代替休暇で取得が可能
例
<4月に6時間分、5月に2時間分の 代替休暇に相当する法定時間外労働を行った場合>
- 4月の6時間分→5月~6月に取得可能
- 5月の2時間分→6月~7月に取得可能
6月に6時間+2時間=8時間として、1日の代替休暇を取得することも出来ます。
4)代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払い日
トラブルを防止する観点から、労使で定めておくべきものです。
取得日の決定方法(意向確認)
取得するかどうかは法律上、労働者に委ねられており、代替休暇の取得日も労働者の意向を踏まえたものとしなければなりません。
例)月末から5日以内に代替休暇を取得するか否かの意向確認
割増賃金支払日
代替休暇を取得した場合、その分の支払いが不要になることから、いつ支払うのかも定めておきます。
例)代替休暇取得の意向→賃金支払日に25%
代替休暇取得の意向なし→賃金支払日に50%
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