コラム

令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置について【詳細版】

新型コロナウィルスの感染者がまた増加し、“第8波”が間近に迫っていると言われます。一方で、経済活動をコロナ禍前に近づける動きも進んでいます。

そんな中、令和4年12月以降の雇用調整助成金等について、上限額など支給内容の見直しが発表されました。

雇用調整助成金は、コロナウィルス感染症の影響による特例の延長が繰り返し行われてきましたが、12月以降はどのように変わるのでしょうか?

詳しく見ていきましょう。

雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金コロナ特例の経過措置

雇用調整助成金等の内容は令和4年12月以降、通常制度となります。ただし、業況が厳しい事業主については、一定の経過措置が設けられます。

令和5年3月31日までの助成内容は以下の通り。


(括弧書きの助成率は解雇等を行わない場合)(※1)

中小企業 令和4年
10~11月
令和4年12月
~令和5年1月
令和5年
2~3月

原則的な特例
(※2、5)

4/5(9/10)
8,355円
2/3
8,355円
地域特例(※3)
業況特例(※4)
4/5(10/10)
12,000円

特に業況が厳しい事業主
(※6)(経過措置)

2/3(9/10)
9,000円

 

大企業 令和4年
10~11月
令和4年12月
~令和5年1月
令和5年
2~3月

原則的な特例
(※2、5)

2/3(3/4)
8,355円
1/2
8,355円
地域特例(※3)
業況特例(※4)
4/5(10/10)
12,000円
特に業況が厳しい事業主
(※6)(経過措置)
1/2(2/3)
9,000円

◆(※1)令和3年1月8日以降の解雇等の有無で適用する助成率を判断。

原則的な措置(※2)

生産指標が前年同期比(令和5年3月までは、令和元年~4年までのいずれかの年の同期又は 過去1年のうち任意月との比較でも可)で1か月10%以上減少している事業主。
なお、令和4年 12月以降に対象期間が1年を超える事業主については業況を再確認する。

業況特例、地域特例(※3)(※4)

 令和4年12月以降、業況特例、地域特例は廃止。

原則的な措置(※5)

 令和4年12月~令和5年3月について、※2の措置のほか、以下の措置を講じる。

 ・クーリング期間制度(直前の対象期間満了日の翌日から1年経過するまで新たに受給できない制度)を適用しない。
・クーリング期間制度の適用除外となる事業主については、令和4年12月1日~令和5年3月 31日の間において支給限度日数である100日まで受給可能。
・その他、申請書類の簡素化等の特例を継続する。
・これまでコロナ特例を利用せず、令和4年12月以降の休業等について新規に雇用調整助成金を利用する事業主は、経過措置ではなく通常制度による申請を行う。

特に業況が厳しい事業主(※6)

 生産指標が最近3か月の月平均で前年、前々年又は3年前同期比で30%以上減少している事業主。なお、毎月業況を確認する。

令和4年12月以降の中小企業の支給額・助成率をまとめると、

【令和4年12月~令和5年1月】
①「原則的な措置」→日額上限:8,355円、助成率2/3
②特に業況が厳しい事業主(経過措置)→日額上限9,000円、助成率9/10
 ※解雇等がない場合

【令和5年2月~令和5年3月の制度】
・「原則的な措置」のみ→日額上限:8,355円、助成率2/3

令和5年4月以降の取扱いについては、新型コロナウイルス感染症の感染状況や雇用情勢を踏まえながら検討の上、改めてお知らせします、と発表されています。

令和4年12月以降、新たにコロナを理由として雇用調整助成金等を申請する場合の支給要件の一部緩和(予定)

令和4年12月以降に新たに雇用調整助成金を利用する場合についても、以下のように発表がありました。

これまでコロナ特例を利用しておらず、令和4年12月以降の休業等から新たに雇用調整助成金を申請する場合は、コロナ特例ではない通常の制度による申請となります。
ただし、コロナを理由とする休業等であって、判定基礎期間の初日が令和4年12月1日から令和5年3月31日までの間の支給要件は、以下の通りとなります。

  • 計画届の提出不要
    通常の雇用調整助成金制度では休業等の実施前に事前に計画届を提出する必要がありますが、コロナを理由とする休業の場合は不要とします。
  • 残業相殺を行わない
    判定基礎期間中に実施した休業や教育訓練の延べ日数から、その期間中に実施した所定時間外労働の日数を差し引く残業相殺は行いません。
  • 短時間休業の要件緩和
    通常の雇用調整助成金制度における短時間休業は、対象労働者が一斉に実施することを要件としていますが、一部の労働者を対象とした短時間休業も助成対象とします。
  • 生産指標の確認は、直近3か月と前年同期との比較
    直近3か月の売上高などが前年同期と比較して10%以上低下していることが要件となります。比較可能な前年同期がない場合は助成対象となりません。
  • 雇用条件を満たす必要あり
    休業等を実施する事業所における雇用被保険者数や派遣労働者数の直近3か月の平均値が、前年同期に比べ5%を超え、かつ6名以上(中小企業は10%を超えかつ4名以上)増加していないことが要件となります。

※施行にあたっては厚生労働省令の改正等が必要
出典元:厚生労働者リーフレット「令和4年12月から新たにコロナを理由として雇用調整助成金等を申請する事業主のみなさまへ

これまでコロナ特例の延長を繰り返してきた雇用調整助成金ですが、12月以降は原則、通常制度の雇用調整助成金の内容となります。業況が厳しい事業主には経過措置が取られますが、これは今までの特例措置の延長とは全く意味合いが異なります。

12月以降は生産指標の確認(1か月10%以上低下しているか)が行われ、コロナ特例ではカウントされなかった支給限度日数も、100日が限度となります。

また、12月以降新たにコロナの影響を受けて休業する事業主は、経過措置の対象にもなりません。

雇用調整助成金の特例については「通常制度に移行する」とされ、経過措置期間(令和4年12月~令和5年3月)の終了後は、完全に通常制度となる予定です。

 コロナ特例の助成金はいよいよ終了となる見込みですが、令和5年4月以降の取扱いについては、新型コロナウイルス感染症の感染状況や雇用情勢を踏まえながら検討されることとなっており、今後も注視していく必要があります。

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