コラム

ロクイチ報告シリーズその3~労働者派遣事業報告書~

労働者派遣事業報告書とは?

派遣元事業主には、労働者派遣法に基づき、直近の事業年度の実績および6月1日現在の状況について、「労働者派遣事業報告書」(様式第11号)により報告することが義務付けられています。

もともとは年に2回、年度報告と状況報告に分けて労働者派遣事業報告書を提出していましたが、2015年の派遣法改正により、年度報告と状況報告が「労働者派遣事業報告書」として一本化されました。これに伴い、年に1回、6月30日が提出期限、となりました。

労働者派遣事業報告書では、事業の業績を報告するだけではなく、派遣労働者の契約状況や直接雇用の見込みの有無、安全・衛生面について、キャリアアップ指導の状況などを詳細に報告しなければなりません。

また、派遣実績がない場合でも報告が必要となります。
提出期限を過ぎたり、報告書が事実と異なる場合には、罰則が設けられています。

なお、様式は令和3年6月報告分から新様式となっています。

年度報告

年度報告は、提出する6月以前の決算月ごとに報告の対象期間が変動します。

下記の資料を参照し、自社の報告対象期間を確認してください。

状況報告

状況報告はその年の6月1日の状況でまとめます。

6月30日の提出期限まで1か月以内の提出とスケジュール的にタイトですが、早めの準備を心がけ、期日内に報告しましょう。

労働者派遣事業報告書作成の際のチェックポイント

報告書は事実に則り記載しますが、労働者派遣事業報告書を提出することで、何をチェックされているかを理解しておくことが大事です。

以下に挙げるチェックポイントは、これらができていない、守られていない場合には、労働局から指導が入る可能性がありますので必ずチェックしましょう。

これらのチェックポイントは、派遣事業が法律に則って適切に行われているかを確認する項目です。労働者派遣事業報告書の作成・提出の機会に、自社の事業が適切に行われているかを改めて見直していきましょう。

禁止業務への派遣をしていないか

労働者派遣事業では、派遣できない禁止業務があります。

例えば港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関連業務、弁護士・社会保険労務士などの仕業が禁止業務に該当します。

ただ、条件次第では派遣可能になる場合もあります。労働者を派遣している業務に問題がないか、細かい条件とともに確認しましょう。

日雇派遣の原則禁止に該当する派遣を行っていないか

日雇派遣は基本的に禁止です。しかし、一定の条件を満たした人、もしくは業種のみは日雇派遣が可能になります。

該当する条件の一部は以下の通りです。

【日雇派遣が可能な人】

  • 60歳以上
  • 雇用保険が適用されない学生
  • 年収500万円以上で副業として日雇派遣をする人
  • 世帯年収が500万円以上でその主たる生計者ではない人

【日雇派遣が可能な業種】

  • ソフトウェア開発
  • 機械設計
  • 事務用機器操作
  • 通訳、翻訳、速記
  • 秘書
  • ファイリング
  • 調査
  • 受付、案内
  • 広告デザイン など

上記以外で日雇派遣があれば法律違反となります。確認が必要です。

グループ企業への派遣割合

大企業の子会社として労働者派遣事業を行う企業の場合、通常、親会社やグループ企業への人材派遣がメインとなります。

しかし、すべての人材をグループ会社へ派遣することはできません。労働者派遣法ではこの派遣割合を8割以下にすることが義務付けられています

該当する企業はこの割合を越えていないか、今一度確認しましょう。

適切な情報提供を行っているか

労働者派遣事業を行う派遣会社は、派遣先企業および派遣労働者に対し、正しい情報提供をしなければなりません。

派遣先企業に対してはマージン情報の開示、派遣労働者に対しては、自らにとって適切な仕事を選択するために必要な情報を提供する義務があります。これらが適切に行われているかどうかもチェックしましょう。

事業所単位・個人単位の期間制限を超えていないか

同じ事業所・同じ部署で派遣労働者として勤務可能な期間は、原則最大3年間です。

個人単位、事業所単位でも、期日をすぎて派遣されている状況にないか確認が必要です。

雇用安定措置を実施しているか

派遣元事業主は、3年以上の継続勤務を希望する派遣労働者に対し、

派遣先への直接雇用の依頼や、新たな派遣先の提供、有給の教育訓練、紹介予定派遣など、安定した雇用の継続を図るために必要な措置を取らなければなりません。

これらの対応が適切に行われているかもチェックされます。

キャリアアップ支援を実施しているか

派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者のキャリアアップ支援を行わなければなりません。
具体的には以下の条件を満たすことが必要です。

派遣労働者のキャリア形成を念頭においた、段階的かつ体系的に教育訓練の実施計画を定めていること

  • 入職時の教育訓練は必須。 少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の教育訓練の機会の提供が必要
  • フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、 毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会の提供が必要

キャリアコンサルティングの相談窓口を設けていること

  • 相談窓口は、雇用する全ての派遣労働者が利用できること
  • 希望する全ての派遣労働者がキャリアコンサルティングを受けられること

キャリア形成を念頭においた派遣先の提供を行うよう規定されていること

テキャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル等が 整備されている必要があります。

キャリアアップ計画の周知

労働者派遣事業報告書の中では、具体的に何時間キャリアアップ教育を行ったのかを記載する項目もあります。

キャリアアップ教育を行う都度記録し、正確な時間数を把握しなければなりません。

労働条件、就業条件、派遣料金の明示がされているか

雇用契約の際には、勤務時間や残業の有無、就業場所、時給・月給、各種手当などの労働条件について、すべてを派遣労働者に理解できるよう詳しく説明しなければなりません。派遣料金についても明示しなければなりません。

労働・社会保険の加入手続きを行っているか

派遣元事業主は、雇用する派遣労働者の保険関係手続きを正しく行わなければなりません。

加入の主な要件は下記のとおりです。

  • 労災保険⇒すべての労働者が対象
  • 雇用保険⇒1週間の労働時間が20時間以上、かつ31日以上の継続雇用
  • 健康保険・厚生年金保険⇒2ヶ月以上の契約期間を前提に、週に30時間以上勤務する場合

上記以外にも細かな条件があります。雇用の際にはしっかりと確認しましょう。

◇まとめ◇

労働者派遣事業は、すべての企業、事業主が行えるものではありません。

労働者派遣事業は、国の許可を得て初めて行える事業であり、その許可を得るための要件は法律で厳しく定めらています。

労働者派遣事業が常日頃から正しく行われているかを確認するための「労働者派遣事業報告書」は、派遣会社・派遣元事業主にとって非常に重要なものです。

労働者派遣事業報告書を期限までに提出しなかった場合には、行政指導や許可取り消し、場合によっては業務停止が命じられることもあります。 提出期間が1か月と比較的短いものですが、準備できる部分は早めに準備をし、必ず期日までに提出しましょう。

\派遣事業に関して、お困り事がございましたらclovicにお問い合わせください/

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