ロクイチ報告シリーズその2~障害者雇用状況報告書~
障害者雇用状況報告書とは
障害者雇用状況報告書は、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法) 」で義務づけられた報告です。
一定以上の従業員を雇用する企業には「障害者の雇用促進」が義務付けられています。
そして、その雇用状況を年一回「障害者雇用状況報告書」にまとめて報告します。
毎年6月1日時点の状況を報告するため、「ロクイチ報告」または「6/1報告」ともいわれます。
障害者雇用状況報告書の目的
「障害者雇用状況報告書」の目的は障害者の雇用状況と障害者雇用率の達成状況の把握です。
国はこの報告をもとに、必要に応じて企業に対し助言・指導・調査等を行うための基本情報として活用します。
報告義務のある企業
従業員43.5人以上の企業が対象です。
2021年3月1日に施行された改正「障害者雇用促進法」により、法定雇用率が民間企業の場合2.3%に変更されました。これに伴い、従業員数が43.5人以上の企業に対し障害者1人以上の雇用が義務付けられました。
従って常用雇用労働者(除外率により除外すべき労働者を控除した数)が 43.5 人以上の事業主は、「障害者雇用状況報告書」の作成・提出義務があります。
雇用する障害者がいない場合でも報告義務があります。その場合は該当者数0人として報告します。
参考ですが、「高年齢者雇用状況報告書」の場合は、常用労働者数が31人以上で提出義務があります。
提出期限と提出方法
対象となる企業には5月下旬~6月初旬頃に書類一式が郵送されます。
様式は厚生労働省ホームページからもダウンロードすることができます。
今年の提出期間は 6月1日(水)~7月15日(金)
6月1日現在に在籍している障害者の雇用状況を記入・報告し、7月15日までに管轄ハローワークの窓口に持参、または郵送します。
e-Govを利用しての電子申請も可能です。
罰則
この報告を怠った、もしくは虚偽の報告をした場合は、障害者雇用促進法第86条第1号の規定により30万円以下の罰金が課せられます。
書類が届いたら忘れずに必ず提出しましょう。
新様式と記入上の注意点
報告書の内容は大きく分けて6つです。それぞれに現状を記入します。
障害者の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立し一定の要件を満たす場合は、子会社に雇用されている従業員も親会社の被雇用者として実雇用率の算定に含むことができます。
特例認定を受けている企業は、別様式を使用します。
基本となる様式第6号の内容と記入状の注意点は以下の通りです。
【基本となる様式第6号の主な内容】
- 事業主情報
- 事業所ごとの区分と除外率
- 常⽤雇⽤労働者数
- 常用雇用身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数
- 実雇⽤率と法定雇⽤率に対する雇用障害者の不足数
- 種類別の身体障害者数
- 障害者雇⽤推進者および報告書記⼊担当者名
\令和4年から障害者雇用状況報告書の様式が変わります!/
改正点は3つです。
①法人番号欄の追加
13桁の法人番号欄が追加されました。
②事業所区分欄の追加
特例子会社、指定就労継続支援A型事業所を区分する「事業所の区分欄」が追加されました。
③身体障害者種類別欄の追加
「障害者の雇用の促進等に関する法律別表に掲げる種類別の身体障害者数」欄が追加されました。
身体障害者について、画像下部にある分類表に沿って記入します。
※1 実人数で計上(複数の障害がある場合は主たる障害のみ計上)
※2 障害程度の区別は不要
記入方法
事業主情報
企業名や所在地、代表者氏名、法人番号、事業の種類、産業分類、事業所の数を記入します。
産業分類には「日本標準産業分類」中分類の二桁の番号を記入します。
事業所ごとの区分と除外率
雇用状況は事業所別に内訳を記載します。本社以外に支店や営業所のあるときは、その名称・所在地・事業内容・適用事業所番号を記載します。
支店や営業所ごとに異なった番号がない場合 は、直近上位の事業所の適用事業所番号の頭4 桁(安定所番号)を記入します。適用事業所番号が一つしかない場合は、本社の適用事業所番号の頭4桁を記入することになります。
除外率がある場合には%を記入します。
「除外率」とは?
テキストが建設業や林業、鉄鋼業など、一般に障害者が就業することが困難とされる業種の事業所について、障害者の雇用義務を軽減するために業種ごとに定められた割合(除外率)のこと。
雇用する労働者数を算出する際、全体から除外率に相当する労働者数が控除されます。
除外率制度は、制度自体は廃止されていますが、経過措置として暫くの間除外率を設定するとともに、廃止の方向で徐々に除外率を引き下げることになっています。
事業所ごとに、主たる事業に除外率が定められている場合のみ、該当する除外率を記入します。全ての事業所で該当しない場合は、ここには何も記入する必要はありません。
常⽤雇⽤労働者数
「常用雇用労働者」とは、雇用契約の形式如何を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上 の者であって、1年を超えて雇用される者(見込みを含む。) をいいます。昼間学生や外国人労働者(技能実習、特定技能含む)も、該当すれば常用雇用労働者となります。
1週間の所定労働時間が20時間未満の労働者については、ここでいう常用雇用労働者の範囲には含まれません。
ここでは、短時間労働者(週の所定労働時間20時間以上30時間未満)数とそれ以外の労働者数(週の所定労働時間が30時間以上)数を分けて集計します。短時間労働者は1人を0.5人として計算し、常用雇用労働者と合計したものが、法定雇用障害者数の算定の基礎となる常用雇用労働者数となります。
常用雇用身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数
障害者の雇用状況は、障害の状況別に人数を報告します。報告の対象となる障害者は、次の5つに分類して集計します。
・重度身体障害者
原則として身体障害者手帳の等級が1級または2級の方
・重度身体障害者以外の身体障害者
原則として身体障害者手帳の等級が3級〜6級の方、7級に該当する障害が2つ以上重複する方
・重度知的障害者
児童相談所、障害者職業センター等により知的障害者と判定された方のうち、知的障害の程度が重いと判定された方
・重度知的障害者以外の知的障害者
児童相談所、障害者職業センター等により知的障害者と判定された方のうち、知的障害の程度が重いと判定された方以外の方
・精神障害者
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方
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2つ以上の障害がある従業員については、いずれか一方の障害(主たる障害)で分類します。
いずれの欄も、常用雇用労働者(週の所定労働時間が30時間以上)と短時間労働者(週の所定労働時間が20時間以上30時間未満)別に人数を集計し、以下のようにカウントして雇用障害者数を算出します。
除外率が適用される場合は、事業所の内訳に沿って事業所ごとに算出、記入します。
なお、過去1年以内(昨年6月2日から本年6月1日まで)に新規で雇用した障害者数については、内数として( )内に記入します。
実雇用率と法定雇⽤率に対する雇用障害者の不足数
常⽤雇⽤労働者、常用雇用身体障害者、知的障害者、精神障害者の各集計をもとに、次のように実雇⽤率を計算します。
次に、法定雇用率(令和4年度は2.3%)から自社に義務づけられている雇用障害者数を計算し、不足人数を割り出します。不足数は、小数点以下1位までを不足数欄に記入します。
不足人数がマイナスになった場合は、「0」を記入します。不足人数がマイナスになると、実雇用率は法定雇用率以上で、法定雇用率を達成していることになります。
種類別の身体障害者数
今回新たに「障害者の雇用の促進等に関する法律別表に掲げる種類別の身体障害者数」の項目が追加されました。
分類表に沿って、種類別の身体障害者の実人数を記入します。
障害者雇⽤推進者および報告書記⼊担当者名
障害者雇⽤推進者とは、障害者の雇い入れ、雇用管理などの責任者のことを言い、障害者雇用推進者の選任は企業の努力義務となっています。
障害者雇⽤推進者は、障害者の雇用の促進のための諸条件整備や雇入れ等に係る国との連絡調整の責任も担うため、たとえば「人事労務を担当する部長クラス等が望ましい」とされています。
まとめ
障害者雇用については、障害の有無に関わらず、誰もがその能力と適性に応じた雇用の場に就き、地域で自立した生活を送ることができるような社会の実現を目指し、国がその雇用対策を総合的に推し進めています。
法定雇用率は2021年3月から2.3%に引き上げられ、企業全体の実雇用率も上昇しています。一方、法定雇用率の達成だけがすべてではなく、障害者が雇用の場で安心してその能力を発揮できるよう、障害者雇用推進者の選任など企業には積極的な環境整備が求められるようになるでしょう。
障害者雇用状況報告書については、その報告をしなかった場合や報告に虚偽があった場合には30万円以下の罰金の罰則が課せられるなど、国の施策の基本資料として厳重に取り扱われています。法定雇用率の達成、障害者の雇用環境の整備とともに、毎年の障害者雇用状況報告書の作成、提出も確実に行わなければなりません。
また、障害者雇用状況報告書の対象企業には、併せて高年齢者雇用状況報告書の提出義務(従業員31人以上)もあります。6~7月、人事労務担当者にとっては届出や報告の多い大変な時期となりますが、日ごろから従業員情報の整理を心がけ期日内に対応できるようにしましょう。