コラム

ロクイチ報告シリーズその1~高年齢者雇用状況等報告書~

高年齢者雇用状況報告書とは

一定以上の従業員を抱える企業には、法律により「高年齢者の安定した雇用確保」が義務付けられています。
そして、その雇用状況を年1回「高年齢者雇用状況報告書」により報告します。

「高齢者雇用状況報告書」は、企業の「定年」や「継続雇用制度」など高年齢者雇用確保措置の導入状況、66歳以上でも働ける制度の有無、定年に達した従業員の状況、などを報告する内容となっています。

毎年6月1日時点での状況を報告するため、通称「ロクイチ報告」または「6/1報告」とも呼ばれます。常時31人以上を雇用する会社は7月15日までに届出をしないといけません。

高年齢者雇用状況報告書の目的

「高年齢者雇用状況報告書」は、高齢者雇用についての企業の姿勢と雇用状況を定期的に報告させることにより、高年齢者雇用安定法に定められた65歳までの雇用確保措置及び70歳までの就業確保措置の実施状況等を把握するとともに、必要に応じ各企業に対し公共職業安定所等による助言・指導等を行うための基本情報として用いられます。

提出義務のある企業

会社全体で常時雇用労働者が概ね「31人」以上の企業が対象です。

対象企業は、高年齢者の労働者がいない場合でも報告書の提出義務があります。
該当者がいない場合は、雇用者数をゼロとして報告します。

※常時雇用する従業員31人とは?
1年以上継続して雇用されている人(1年以上雇用予定含む)、かつ週の所定労働時間が20時間以上の人が31人以上いれば対象となります。

提出期限と提出方法

5月下旬~6月初旬にハローワークから「高年齢者雇用状況等報告書」が郵送で企業へ届きます。

厚⽣労働省のホームページからもダウンロードできます。

今年の提出期間は、6月1日(水)~7月15日(金)

6月1日現在在籍している高年齢者の雇用状況について報告書に記入し、7月15日までに管轄するハローワーク窓口に持参または、郵送で提出します。
e-Govを利用しての電子申請も可能です。

記入方法と注意点

2021年4月1日に施行された改正高年齢者雇用安定法により高年齢者雇用確保措置が見直され、これまでの65歳までの雇用確保措置に加え、65歳から70歳までの就業機会の確保が努力義務とされました。

これを受け、高年齢者雇用状況報告書は2021年から新様式となっています。

具体的には、

  • 定年制の状況
  • 定年後の継続雇⽤制度の状況
  • 創業支援等措置の導入状況
  • 66歳以上まで働ける制度の導入状況
  • 常⽤労働者数、過去1年の離職者数
  • 過去1年の定年到達者数
  • 70歳までの就業確保措置に関する過去1年間の適用状況

などを報告する内容となっています。

新様式

①事業主情報

法人名、住所、法人番号などを記入します。

②定年制の状況

就業規則において定年を定めている場合は、「定年あり」にチェックし、定年年齢を記入します。定年年齢が職種別に異なる場合は、最も若い年齢を記入し、定年年齢を従業員が自由に選択できる制度がある場合は、 選択可能な最も高い年齢を記入します。なお、定年年齢は法律により60歳を下回ることはできません。

就業規則に定年の定めがなければ、「定年なし」をチェックします。
また、今後の定年制の改定予定、廃止予定状況についても記入する必要があります。

③継続雇⽤制度の状況

定年後の継続雇用制度の導入状況を記入します。定年後の継続雇用制度を就業規則で定めている場合は、「a継続雇用先」と「b対象」を必ず記入します。
希望者全員か基準に該当するもの限定を選択し、継続雇用の上限年齢を記入します(上限の規定がない場合は「99」と記入)。

継続雇用制度を設けていない場合は、「制度として導入していない」をチェックします。
また、今後の継続雇用制度の導入・改定予定があるかどうかについても記入します

現状として65歳まで雇用が維持されない状態の企業では、就業規則の見直しが必要になります。

④創業支援等措置の状況

創業支援等措置とは、2021年の改正高年齢者雇用安定法により追加された70歳までの就業確保措置のうち、次のような雇用によらない措置のことをいいます。

企業には努力義務として次のような制度の導入が求められています。

  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
       a.事業主が自ら実施する社会貢献事業
       b. 事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業

    ※「社会貢献事業」に該当するかどうかは、事業の性質や内容等を勘案し て個別に判断されます。

この項目は、この措置の導入の有無にかかわらず、全ての対象企業が記入します。

⑤66歳以上まで働ける制度の状況

平成30年度から66歳以上まで働ける制度等の状況 が報告項目に加わりました。

この欄は、66 歳以上まで働ける制度がまったくない場合や、制度はあるが具体的・客観的な基 準ではなく個別の判断により継続就労可能としている場合に記入します。

定年がない場合、または、継続雇用制度もしくは創業支援等措置の年齢欄に「70歳以上」と記入している場合(上限年齢ない場合を含む)は、この項目は重複する内容となるため記入する必要はありません。

⑥常⽤労働者数と過去1年の離職者数

常用労働者数(うち女性) は、6月1日現在の状況を年齢別で記入します。
過去1年間の離職者の状況(うち女性) は、過去1年間の状況を記入します。

「常用労働者」とは、1年以上継続雇用見込のある、1週間の所定労働時間が20時間以上の従業員のことをいいます。
離職者数は、離職者全員の人数ではなく、以下の理由により離職した 45 歳以上 70 歳未満の従業員の人数を記載し、高年齢者が事業主の都合により離職となった人数等を報告します。

  • 解雇(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く)
  • 継続雇用制度の対象者となる高年齢者に係る基準(2012年改正の経過措置に基づくもの)を定めている場合において、当該基準に該当しなかったことによる退職
  • その他事業主の都合による退職
  • 2021年4月1日以降において、創業支援等措置による契約が事業主都合により終了する場合(自己の責めに帰すべき理由によるものを除く)

⑦過去1年間の定年到達者等の状況

「定年到達者数」は、新様式で追加された項目です。高齢者雇用に関する制度を、定年に達した人や継続雇用が終了した人が実際に利用しているかどうかを報告します。
定年年齢が64歳までの企業は「65歳未満」の項目に記入し、定年年齢が65歳以上の企業は「65歳以上」の項目にします。「65歳以上」の項目には、就業確保措置に該当する人数も記載します。

⑧過去1年間の経過措置に基づく継続雇用の対象者に係る基準の適用状況(平成 24 年改正法に基づく経過措置)

平成 24 年改正法の経過措置に基づいて、継続雇用の対象者を限定する基準を導入している場合に、 過去1年間(令和3年6月1日から令和4年5月 31 日まで)に基準の適用年齢に達した従業員の状況を記入します。
なお、当該基準の適用年齢は令和4年 4月1日より 64 歳以上です。

⑨過去1年間の継続雇用等の対象者に係る基準の適用状況(70 歳までの就業確保措置関係)

新たに追加された項目です。70歳までの継続雇用制度や70歳までの創業支援措置を導入している場合に記入します。
なお、70歳までの継続雇用制度には自社だけでなく、特例関係事業主に加えて、他の事業主によるものも含みます。65歳までの継続雇用制度とは大きく違うポイントです。

⑩⾼年齢者雇⽤促進者および記⼊担当者名

「高年齢者雇用等推進者」を選任している場合は、その 役職と氏名を記入します。


「高年齢者雇用等推進者」とは、企業における高年齢者の安定した雇用機会の確保等を推進するための取組の中心的役割を担う者として、事業主が選任するよう努めなければならないとされています(高年齢者雇用安定法第 11 条)。一般的には、事業所の責任者や総務・人事部門の管理職などが選任されます。

まとめ

少子高齢化が進み現役世代の人口が急速に減少するなかで、経済活動の維持のためにも働く意欲のある高齢者の活躍がより期待されるところです。企業に望まれる高年齢者雇用の状況は、65歳までの雇用確保はもちろん、70歳まで働ける環境整備へと変化しています。今後、企業には法令遵守だけではなく、企業の社会的責任(CSR)がますます重要視される時代となります。働く意欲のある高齢者の積極的な活用は、企業が社会的責任(CSR)を果たすうえで、大きな意義があります。

また、高年齢雇用報告書では、定年や継続雇用制度など、慣行や実態として年齢に関係なく雇用が継続している者がいたとしても、就業規則上どうなっているか、制度としてきちんと運用されているかどうかが問われます。
自社の就業規則、制度運用に法的対応の遅れがないか、実態とのズレが生じていないか、「高年齢者雇用状況報告書」作成・提出の機会にしっかりと見直すことが重要です。

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