コラム

令和6年 年末調整の概要と改正

今年も「年末調整」の季節がやってまいりました!
今年は定額減税もあり、例年と少し流れが異なります。総務・経理ご担当の皆様は、注意しながら対応をしていきましょう。
それでは、《年末調整の概要》《令和6年度の法改正》《令和7年度以降の改正》の3点を見ていきたいと思います。

年末調整の概要

年末調整とは、毎月の給与や賞与から源泉徴収されている所得税・復興特別所得税(給与明細上は、「源泉所得税」と表記されていることが多いです)の税額と、その年に払わなければならない本来の年税額を一致させる精算の手続きです。

年末調整の対象者は、原則として勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人です。
給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一定の人は年末調整の対象から外れます。

年税額よりも多く徴収していた場合は還付され、徴収額が年税額よりも少なかったら追加で徴収されます。

年末調整はいつ行う?

年末調整は、「本年最後に給与を支払う際」に行います。

多くは、12月の給与の支給日に行いますが、末締め10日支給等は1月の支給日で行う場合もあります。

年末調整の対象者は?

主な対象

  • 1年を通じて勤務している人
  • 年の途中で就職し、年末まで勤務している人
  • 給与の総額が2,000万円以下の人

また、下記の場合は年の途中で行う年末調整の対象となります。

  • 海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人
  • 死亡によって退職した人
  • 著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除く。)
  • 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
  • パートとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除く。)

◇年末調整 対象者の提出物

  • 「扶養控除等(異動)申告書」
  • 「保険料控除申告書」
  • 「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
  • 途中入社で前職がある場合、「前職の令和6年度分 源泉徴収票」
  • 住宅ローン減税対象者は、「借入金年末残高等証明書」「住宅借入金等特別控除申告書」

令和6年度の法改正

1⃣ 定額減税による「年調減税」への対応

令和6年分の所得税については、「定額減税」が実施されています。
年末調整の際には、年末調整時点の定額減税の額「年調減税額」を算出して、年間の所得税額の計算を行う必要があります。

「定額減税」については、こちらのコラムをご覧ください。

○年末調整の際に定額減税の対象となる人

年末調整の対象となる人が、原則、年調所得税額から年調減税額を控除する「年調減税」の対象となります。

  • 年末調整の対象となる人のうち、給与所得以外の所得を含めた合計所得金額が1,805万円を超えると見込まれる人については、年調減税額を控除しないで年末調整を行います。

○年調減税額

本人:30,000円

同一生計配偶者と扶養親族一人につき:30,000円

「扶養控除等(異動)申告書」や「配偶者控除等申告書」などから、年末調整を行う時の現況における同一生計配偶者の有無及び扶養親族の人数を確認します。

  • 同一生計配偶者(居住者に限る)を年調減税額の計算に含めるためには、給与所得者が「配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」にその配偶者を記載して提出する必要があります。

○年調減税額の控除

年調減税額の控除は、住宅借入金等特別控除後の所得税額(年調所得税額)から、その住宅借入金等特別控除後の所得税額を限度に行います。
また、年調減税額を控除した金額に102.1%を乗じて、復興特別所得税を含めた年調年税額を計算します。

出典:https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0023012-317.pdf

2⃣ その他変更点

国外居住親族への「送金関係書類」の提出書類範囲の追加

非居住者(国外居住)である親族について、扶養控除等の適用を受けるためには、「送金関係書類」の提出をしなければなりません。
これまでは、主に銀行の振込明細書などが「送金関係書類」として認められていましたが、令和6年からは「電子決済手段の国外移転の依頼をする場合の依頼書の控え」が追加されました。
これは、PayPayなどの電子決済サービスを利用して、非居住者である親族に送金した場合に発行される書類です。

保険料控除申告書 記載事項の簡素化

令和6年10月1日以後に提出する「保険料控除申告書」について、「申告者との続柄」の記載が不要になりました。

住宅ローン控除申告書への借入金残高証明書の添付不要

金融機関等が税務署に「年末残高調書」を提出し、国税当局から納税者に住宅ローンの「年末残高情報」を提供する方式に変更する改正が行われています。(令和5年度以降住居対象)

ただし、金融機関等におけるシステム改修などへの対応が必要なため、経過措置が設けられています。

扶養控除申告書の提出簡略化

令和7年1月1日以後に支払いを受けるべき給与等について提出する「扶養控除等申告書」について、記載すべき事項が前年の申告内容と異動がない場合、その異動がない旨の記載のみで提出ができるようになりました。

令和7年度以降の改正予定

主な事項をご紹介いたします。

  • 住宅ローン控除の拡充

[検討段階]

  • 扶養控除の見直し
  • ひとり親控除の拡充
  • 子育て世帯等の生命保険料控除の拡充

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