障害者雇用率制度について
障害者雇用率制度とは
障害者について、障害に関係なく個々の能力に応じて一般労働者と同じ水準で 常用労働者となり得る機会を確保することとし、誰もが職業を通じた社会参加のできる「共生社会」実現の理念の下、障害者雇用率(常用労働者の数に対する割合)を設定し、事業主に障害者雇用率達成義務等を課すことによりそれを保障するものです。
(障害者雇用促進法43条第1項)により従業員が一定数以上の規模の事業主は、 従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。 その雇用義務を履行しない事業主に対しては、ハローワークから行政指導がなされます。
法定雇用率
令和6年4月から令和8年6月までの雇用率
民間企業:2.5% 国、地方自治体:2.8% 都道府県等の教育委員会:2.7%
令和8年7月以降の雇用率
民間企業:2.7% 国、地方自治体:3.0% 都道府県等の教育委員会:2.9%
民間企業における雇用率設定基準
障害者雇用率=常用労働者-除外率相当労働者数+失業者数÷(身体障害者及び知的障害者である常用労働者の数+失業している身体障害者及び知的障害者の数)
特殊法人、国及び地方公共団体における障害者雇用率
一般の民間企業の障害者雇用率を下回らない率をもって定めることとされています。
現在、民間企業の法定雇用率は2.5%です。
従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。 2024年4月より2.5%に引き上げられ、2026年7月からは2.7%へ引き上げられることが決定されました。 この引き上げに伴い、障害者を1人雇用しなければならない事業主の範囲が、 2024年4月より「従業員40人以上」、 2026年7月より「従業員37.5人以上」へ広がることになります。
そのため上記規模の事業主には、今後次の対応が求められることとなります。
- 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告すること
- 障害者雇用の促進と継続を図るために「障害者雇用推進者」を選任するよう努めること
- 障害者を解雇する場合、ハローワークに解雇届を届け出ること
実雇用率の算定方法
実雇用率の算定方法は下記の通り定められています。
週所定労働時間 | 30時間以上 | 20時間以上 30時間未満 | 10時間以上 20時間未満 |
---|---|---|---|
身体障害者 | 1 | 0.5 | - |
重度身体障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
知的障害者 | 1 | 0.5 | - |
重度知的障害者 | 2 | 1 | 0.5 |
精神障害者 | 1 | 1(※) | 0.5 |
※当分の間の措置として、精神障害者である短時間労働者は、雇入れの日からの期間等にかかわらず、1人をもって1人とみなすこととしている。
「障害者」とは?
障害者雇用率制度の上では、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の所有者を実雇用率の算定対象としています。ただし、障害者雇用に関する助成金については、手帳を持たない統合失調症、そううつ病(そう病・うつ病含む) 、てんかんの方も対象となり、またハローワークや地域障害者職業センターなどによる支援においては、 「心身の障害があるために長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な方」が対象となります。
障害者雇用率制度では、次の障害者を雇用する場合に法定雇用率の算定対象となります。
- 身体障害者 ▶ 身体障害者手帳1~6級に該当する人
- 知的障害者 ▶ 児童相談所等で知的障害者と判断された人
- 精神障害者 ▶ 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
※精神障害者保健福祉手帳には有効期間が設けられているため、実務においては対象者と有効期間を把握することが必要です。
◆(令和5年4月以降)精神障害者の算定特例の延長
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1カウントとして算定できるようになります。
◆(令和6年4月以降)一部の週所定労働時間20時間未満の方の雇用率への算定
週所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者及び重度知的障害者について、雇用率上、0.5カウントとして算定できるようになります。
※当分の間の措置として、精神障害者である短時間労働者は、雇入れの日からの期間等にかかわらず、 1人をもって1人とみなします。
※2024年4月より短時間労働者(週所定労働時間10時間以上20時間未満)である「精神障害者」「重度身体障害者」「重度知的障害者」については、1人をもって0.5人と算定します。
※事業所(支店等)が複数ある場合でも、事業主(企業)全体で集計を行ないます。1年を超えて雇用されているか、または1年を超えて雇用される見込みがある「常用労働者」が対象となり、週の所定労働時間によってカウント方法が異なります。
雇用義務を履行しない場合は?
雇用義務を履行しない事業主に対しては、ハローワークから下記の「障害者雇用率達成指導」が行われ、 「雇入れ計画」の着実な実施により障害者雇用の推進を指導しています。
- 雇用状況報告(毎年6月1日の状況)
- 雇入れ計画作成命令の発出(翌年1月を始期とする2年間の計画)
- 雇入れ計画の適正実施勧告(計画の実施状況が悪い企業に対し、適正な実施を勧告)
- 特別指導(雇用状況の改善が特に遅れている企業には 公表を前提とした特別指導を実施(計画期間終了後に9か月間))
- 企業名の公表(不足数の特に多い企業については、当該企業の幹部に対し、厚生労働省本省による直接指導も実施)
また、障害者雇用を始める事業主に対して地域障害者職業センター等が無料相談を実施しています。