年金事務所(社会保険)調査について
年金機構では、定期的に社会保険に関する調査を行っています。
年金事務所から「健康保険及び厚生年金保険の被保険者の資格及び報酬等の調査実施について」という書類が送られてきて、これに対応することで調査が行われます。
社会保険に関する調査は、2022年の社会保険の適用拡大以降チェックが厳しくなり、細かく指摘されることが多くなっているようです。
では、社会保険に関する調査がどういうものか見ていきましょう。
3つの調査の種類と概要
社会保険調査の目的は、企業の社会保険料の適正な支払いや、被保険者の報酬に基づく適切な保険料の算定です。
調査には、おもに以下の3つがあります。
法律上、社会保険の適用が必要であるにも関わらず、適用手続きを行っていない事業所に対して実施される調査
「未適用の事業所へ加入を促す」ことを目的に行われる調査です。
社会保険の新規適用時に実施される調査
社会保険に新規に加入してから3か月以降に行われる調査です。主に「取得漏れ」などの確認がなされます。
社会保険が適用となっている事業所に定期的に実施される調査
既に社会保険に加入している事業所に対して、3年~5年に1回程度行われる調査です(算定基礎届提出時期に実施されます)。「取得漏れ」「標準報酬月額が適切か」等、社会保険に関する様々な要素が調査されます。
調査対象となる事項
1. 取得漏れの有無
社会保険の加入資格を持つ従業員は、パート・アルバイト・契約社員等を問わず、資格取得の手続きがなされていないといけません。未加入の従業員や加入手続きの漏れがないかを確認し、必要に応じて追加の手続きの指導等が行われます。
2. 取得日は適正か
被保険者に該当する従業員は、その要件に該当することとなった初日から社会保険に加入しなければなりません。例えば、正社員であれば入社年月日が資格取得日となり、「試用期間は社会保険に加入しない」というような取扱いは許されません。
加入資格を得た従業員の取得日に間違いがないか、適切な手続きが行われているかを調査します。
3. 算定基礎届および月額変更届の適正な提出
社会保険に関連する届出書類の提出が漏れなく行われているかどうかを調査します。算定基礎届や月額変更届などの書類が適切に提出され、記載内容に間違いがないかを確認します。
4. 賞与支払に関する届出の提出
年に3回以下の賞与を従業員に支給したときは「被保険者賞与支払届」を、また賞与支払予定月に賞与を支給しなかった場合は、「賞与不支給報告書」の提出が必要です。この賞与に関する支払届出書類が適切に提出されているか、必要な手続きが行われているかを調査します。
調査に必要な書類
調査時に必要な書類は年金事務所により異なる場合もありますが、一般的には指定された期間に応じる下記の書類が必要になります。
- 賃金台帳
- タイムカード、出勤簿
- 源泉所得税の領収書
- 就業規則・賃金規程
- 雇用契約書
- 労働者名簿
指摘が多い事例
- パート・アルバイトで加入義務のある従業員の資格取得がされていない
- 月額変更の手続きが漏れている
- 賞与支払届の提出がされていない
- 2つ以上の事業所から給与(報酬)を受けている場合はそれぞれの事業所で加入手続きを取る必要(保険料額は合算して決定)があるが、その手続きがされていない。企業の役員などに多い。
- 75歳超で社会保険に加入できない者であっても、常時勤務する者は、受給する年金との調整のために届出をする必要があるが、この手続きがなされていない。
調査で不備が指摘されると、最大で2年間遡って届出のやり直しや、社会保険料の徴収等が行われる場合があります。
社会保険の適用拡大が順次行われている状況で、経営者や人事・労務担当者は、これまで以上に社会保険調査に対してしっかりと対応していかなければなりません。
被保険者資格の取得や保険料に関する届出が正しくされているかどうか、しっかりと確認しましょう。