出産に関する給付金~出産育児一時金と出産手当金~
出産に関する給付金は、出産育児一時金と出産手当金の二つがあります。
どちらも公的医療保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)からの給付です。
出産育児一時金は、出産そのものにかかる費用に対しての給付。
出産手当金は、出産に伴い仕事ができない期間の生活保障として支給されます。
それぞれを詳しく見ていきましょう。
出産育児一時金
●出産育児一時金とは?
出産に関する費用負担の軽減のために、公的医療保険(健康保険、国民健康保険、共済など)から出産時に一定の金額が支給される制度です。
●対象
公的医療保険の被保険者または被扶養者で、妊娠4カ月以上の出産をした方に支給されます。
早産、死産、流産、人工妊娠中絶の場合も支給対象となります。
●支給額
1児あたり42万円(産科医療補償制度加算対象出産ではない場合は、40.4万円)
※2023年4月から増額される予定です。後のトピックスで詳しく述べます。
●手続き
支給を受けるための手続きには、3つの方法があります。
直接支払制度
支給額に相当する分、出産費用として医療機関で支払う金額が減額されます。
医療機関を通じての手続きとなるため、健康保険組合などへの手続きが基本的に不要となります。
受取代理制度
支給額に相当する分、出産費用として医療機関で支払う金額が減額されます。
出産前に健康保険組合などへの手続きが必要になります。
本人が直接請求する場合
出産費用の全額を医療機関に一度支払った後に、健康保険組合などに手続きをすることで支給額を受け取ることができる方法です。
直接支払制度や受取代理制度を利用した際に、出産費用が支給額を下回った場合は、その差額を受け取ることができます。したがって、どの方法で支給を受けても実際の支給額は同じです。
出産育児一時金に関するトピックス
岸田首相は、10月28日の記者会見で、「来年4月から、出産育児一時金の大幅な増額を行う」ことを表明しました。現状の42万円から47万円に引き上げられる予定です。
出産一時金の増額については、政府が6月に決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」にも増額方針が明記され、岸田総理も、出産育児一時金を「私の判断で大幅に増額する」と明言してきました。
出産は原則、健康保険は適用されず、費用は年々増加傾向にあります。
出産費用(2019年)の平均値・中央値は
- 全体:46万217円・45万1120円
- 公的病院:44万3776円・44万530円
- 私的病院:48万1766円・46万7805円
- 診療所:45万7349円・44万9300円
となっており、現状の42万円ではまかなえない状況にありました。
「少子化の主要因の一つは、経済的負担」と指摘され、出産育児一時金を「最低でも、基礎的な費用の上昇に見合う水準まで」引き上げるべきとの声が上がっていました。
これらを背景に、来春には大幅な増額が実現します。
出産手当金
●出産手当金とは?
出産にあたっては、労働基準法により出産前6週間、出産後8週間の産前産後休業が定められています。
この産前産後休業のために事業主から給与や報酬を得られない期間を対象に、被用者保険から支給されるのが出産手当金です。
●対象
出産のために休業した被用者保険の被保険者
- 出産一時金とは違い、対象は被保険者のみです。
- 国民健康保険の被保険者は対象になりません。
- 同様に、任意継続被保険者も対象となりません。
●支給期間
出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産の予定日)以前42日目(多胎妊娠の場合は98日目)から、出産の日の翌日以後56日目までの範囲内で休業した期間について支給されます。ただし、休んだ期間にかかる分として、出産手当金の額より多い報酬が支給される場合は、出産手当金は支給されません。
予定日より遅れて出産した場合は、実際に出産した日までの期間も支給対象になります。たとえば、実際の出産が予定より4日遅れたという場合は、その4日分についても出産手当金が支給されます。
一方、予定日より出産が早まった場合でも、休業して給与などの支払いがなければ出産日から遡って6週までが産前として支給対象期間になります。
●支給額
1日当たりの金額
【支給開始日の以前12ヶ月間の各標準報酬月額を平均した額】(※)÷30日×(2/3)
(支給開始日は、一番最初に出産手当金が支給された日)
(※)支給開始日の以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、次のいずれか低い額
- 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
- 標準報酬月額の平均額
・30万円:支給開始日が平成31年4月1日以降の方
休んだ期間についての給与の支払いがあっても、その給与の日額が出産手当金の日額より少ない場合は、出産手当金と給与の差額が支給されます。
出産に関する給付についてのトピックス
政府は、妊娠時から出産・子育てまでの支援として、10万円相当の経済的支援を行う方針を正式に発表しました。
岸田首相は10月28日の記者会見で、出産育児一時金の大幅な増額を表明すると同時に、「危機的な少子化の流れの中で、子育て世帯を応援するため、妊娠時から出産・子育てまで一貫した伴走型相談支援と、10万円相当の経済的支援を組み合わせたパッケージを創設する」と表明しました。
支援は、妊娠届出時、出生届出時を通じて合計10万円相当。
政府はクーポンを想定していますが、自治体の判断で現金支給も可能とする方針です。
国の施策として出産準備金、出産育児一時金、出産手当金と、経済的支援による子育て支援をより強化していく流れです。
一方で、妊娠出産に関して医療保険適用がされず、一時金が引き上げられても医療機関の価格設定がさらに上がるという現状を問題視する意見もあります。
国が少子化を危機的状況ととらえる中、出産、子育てに関する支援について、さらに議論がされることでしょう。