コラム
教育訓練休暇給付金について
令和7年10月1日から、新たに「教育訓練休暇給付金」の制度がスタートしました。
この制度は、従業員が離職することなく教育訓練に専念できるよう、無給で休暇を取得した期間に生活費を保障するものです。いわば「学び直し」に専念するための失業給付といえるでしょう。


1. 制度の概要
教育訓練休暇中、従業員は会社と雇用関係を維持したまま一定額の給付を受けることができます。給付日数は加入期間に応じて下記の通り定められています。
| 加入期間 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
|---|---|---|---|
| 所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
給付日額は、休暇開始日前6か月の賃金日額に基づいて算定されます。
2. 支給対象者
対象となるのは、次の要件を満たす方です。
- 訓練休暇開始前2年間に12か月以上の雇用保険加入期間があること
- 通算5年以上の雇用保険加入期間があること
(ただし、過去に失業給付や育児休業給付金等を受けた場合は一部算入されないケースがあります)

3. 対象となる教育訓練
厚生労働大臣が指定する「特定一般教育訓練」や「専門実践教育訓練」など、資格取得や専門スキルの習得につながる講座が対象です。趣味的な内容の講座は対象外となります。
4. 給付の条件
- 就業規則等に「教育訓練休暇制度」が明記されていること
- 就業規則等に基づき、30日以上の連続した無給休暇を取得すること
- 教育訓練休暇は従業員の自発的なものであること(業務命令ではない)
5. 企業にとってのメリット
制度導入により、次のような効果が期待されます。
- 「スキルアップ支援がある会社」として人材確保に有利に働く
- 国の助成制度(人材開発支援助成金 人への投資促進コース)を活用できる可能性がある
- 従業員のスキルアップが、企業の競争力向上につながる

6. 申請の流れ
大まかな手続きは以下の通りです。
- 就業規則等の整備
- 労働者から「教育訓練休暇取得確認票」を受領
- 休暇開始日から10日以内に事業主がハローワークへ必要書類を提出
- 事業主から交付された申請書を労働者へ渡し、本人が記入の上ハローワークに提出
- ハローワークでの受給資格決定後、本人が初回認定を受ける
- 以降は30日ごとに本人が認定申告書を提出
- 初回申請は休暇開始日から30日以内に行う必要があります。
7. 注意点
事業主側
- 解雇予定者について虚偽の届出を行うと罰則の対象となります。
- 書類は休暇開始から30日以内に速やかに交付・提出しなければなりません。
労働者側
- 給付を受けると、それまでの雇用保険被保険者期間はリセットされます。そのため、一定期間は失業給付等の被保険者期間を要件とする給付金を受給できなくなります。
- 受給期間は休暇開始日から1年間までです。所定給付日数が残っていたとしても受給期間を過ぎた場合原則延長は出来ません。
- 不正受給を行った場合は、返還に加えて「3倍返し」となる重い制裁を受けるほか、詐欺罪として刑事処罰の対象となる場合もあります。



教育訓練休暇給付金は、企業と従業員の双方にとって「学び直し」や「スキルアップ」を後押しする制度です。従業員にとっては安心して新たな知識を身につける機会となり、企業にとっては人材育成や採用力強化につながります。
