コラム

子の看護休暇の見直しについて

元来、令和2年6月1日より施行されていた「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第 76 号。以下「育児・介護休業法」)に基づき、小学校就学前の子供を養育する労働者に限り取得が可能であった「子の看護休暇」ですが、今般の法改正に伴い令和7年4月1日より、「子の看護休暇」として名称とともに一部内容も改められることとなりました。

育児休業に関連する今般の法改正は、「男女ともに仕事と育児を両立できるように、育児期の柔軟な働き方を実現するための措置の拡充」という趣旨があります。

大きな改正ポイントとしては、以下の3つが挙げられます。

  1. 子の看護休暇の見直し
  2. 所定外労働時間制限の対象拡大
  3. 短時間勤務制度の代替措置にテレワークが追加

それぞれ、改正趣旨に沿った、労働者の多様な働き方を促進するための施策ですが、今回はその中でも「子の看護等休暇」について、的を絞って解説していきたいと思います。

●そもそも「子の看護休暇」とは?

病気やケガ、または予防接種・健康診断等の子供の世話の為に休みたい、という労働者の申し出に基づき、1年度において5日(養育する子が2人以上の場合にあっては10日)を限度として、取得できる休暇のことを指します。

対象となる子は小学校就学の始期に達するまでの子(=6~7歳までの子)とされており、1日単位又は時間単位での取得が可能です。また、急を要することが多いことから電話等の口頭申出の承認、書類の提出等を求める場合も事後承認として差し支えないこととすることが必要です。

なお、子の看護休暇と労働基準法39条に定められている年次有給休暇とは別物です。会社ごとの就業規則や規定によって取り扱いは異なってきますが、子の看護休暇は無給でも法律上問題ありません。

また、時間単位で取得する場合は、基本的には始業の時刻から、あるいは就業の時刻までの連続した時間での取得が法律上求められる最低基準となります。

いわゆる「中抜け」までは法律上の規定として求められていないので、中抜けできる休暇や有給休暇として取り扱いされている会社は、労働者に手厚い会社と言えるのではないでしょうか。

●令和7年4月1日以降の改正点

改正内容概略図

改正内容令和7年3月31日まで令和7年4月1日から
名称子の看護休暇子の看護等休暇
対象となる子小学校就学の始期に達するまで小学校3年生修了まで
取得事由① 病気・けが
② 予防接種・健康診断
① 病気・けが
② 予防接種・健康診断
③ 感染症による学級閉鎖等
④ 入学式・卒業式
除外対象
※②~④は労使協定が必要
① 日雇い労働者
② 週所定労働日数が2日以下の労働者
③ 継続雇用期間6ヶ月未満の労働者
(④ 時間単位での取得が難しい業務に就く労働者における時間単位の子の看護休暇の取得)
① 日雇い労働者
② 週所定労働日数が2日以下の労働者
(③ 時間単位での取得が難しい業務に就く労働者における時間単位の子の看護等休暇の取得)

① 対象となる子の範囲の拡大

今年の改正により、従前は「小学校就学の始期に達するまで」、と定められていた子供の年齢が、「小学校3年生修了まで(=9歳の年度末まで)」拡大されました。

なお、1年間に取得できる原則日数は変更ありません。(1人につき5日、2人以上の場合10日)

② 取得事由の拡大

従前はあくまでも傷病の看護や傷病の予防措置に限られていた取得事由ですが、新たに「感染症に伴う学級閉鎖等」、「入学式、卒業式」という2つが追加されました。

これに伴い制度の名称自体が変更となり、「子の看護休暇」と改められています。

③ 労使協定により除外できる対象の縮小

令和7年3月31日までは、下記労働者は看護休暇を取得できないという制限がありました。

  1. 日々雇入れられる者
  2. 週の所定労働日数が2日以下の者
  3. 継続して雇用された期間が6ヶ月未満の者
  4. 時間単位で看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者
    (※時間単位での取得はできませんが、1日単位での取得は可能)

これらの内、2~4の労働者については、会社と過半数労働組合若しくは民主的方法により選出された労働者代表間で労使協定を締結した場合、会社は看護休暇の取得申出を拒むことができます。

令和7年4月1日からは3 継続して雇用された期間が6ヶ月未満の者」が除外対象から外れます。

今回は、育児・介護休業法改正の中でも特に子の看護休暇について焦点を当ててみました。
対象となる子供がいる現役子育て世帯の方であれば、男女を問わず申出ることができる制度です。
今年の改正により、さらに取得しやすい仕組みとなりましたが、やはり一般的な認知度は決して高くない様に思われます。会社から権利を有する労働者へ適切に周知することも必要ですが、労働者自身も自らが能動的に行使できる権利を知る様に努める姿勢が必要だと感じます。

令和7年は4月1日と10月1日とで、2段階に分かれて育児・介護休業法改正が行われます。
10月1日以降に施行される改正と併せて、この機に就業規則や社内規定を見直し、労働者が働きやすい環境を整備することも、人手不足が叫ばれる昨今においては、離職防止の重要な要素足り得るのではないでしょうか。

(引用・参考)

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