コラム

人事労務担当者が知っておくべき【2025年度法改正】

人事労務に関する法改正は、毎年のように行われております。令和7年度も「育児介護休業法」の改正を中心に様々な法改正があります。このコラムでは、人事・労務担当者向けに、法改正情報をまとめ、ポイントを解説していきます。

2025(令和7)年法改正一覧

1月労働者死傷病報告等の電子化労働安全衛生規則
4月高年齢雇用継続給付の見直し雇用保険法
4月障害者雇用における除外率の見直し障害者雇用促進法
4月育児休業給付延長時の審査厳格化雇用保険法施行規則
4月基本手当の給付制限の短縮雇用保険法(通達)
4月出生後休業支援給付金の創設雇用保険法
4月育児時短就業給付金の創設雇用保険法
4月仕事と育児の両立支援育児・介護休業法
4月仕事と介護の両立支援育児・介護休業法
4月一般事業主行動計画の見直し次世代育成支援対策推進法
10月教育訓練休暇給付金創設雇用保険法
10月仕事と育児の両立支援育児・介護休業法

① 労働者死傷病報告等の電子化

2025年1月1日より以下の手続について、電子申請が原則義務化されます。

  • 労働者死傷病報告
  • 総括安全衛生管理者/安全管理者/衛生管理者/産業医の選任報告
  • 定期健康診断結果報告
  • 心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告
  • 有害な業務に係る歯科健康診断結果報告
  • 有機溶剤等健康診断結果報告
  • じん肺健康管理実施状況報告

ポイント

「e-Gov電子申請」、厚労省ポータルサイト「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」からの電子申請も可能です。なお、経過措置として電子申請が困難な場合は当面の間書面による手続きも可能とされています。

② 高年齢雇用継続給付の見直し

「雇用保険法等の一部を改正する法律」の施行により、2025年4月1日以降に高年齢雇用継続給付の支給率が最大「10%」(2025年3月31日以前は15%)に引き下げられます。

各月に支払われた賃金の低下率賃金に上乗せされる支給率
64%以下
(61%以下)
各月に支払われた賃金額の10%(15%)
64%超75%未満
(61%超75%未満)
各月に支払われた賃金額の10%(15%)から0%の間で、賃金の低下率に応じ、賃金と給付額の合計が75%を超えない範囲で設定される率
75%以上不支給

※()内は令和7年3月31日以前の低下率・支給率です。
※支給限度額・最低限度額の取扱いに変更はありません。

対象の方

令和7年4月1日以降に60歳に達した日(その日時点で被保険者であった期間が5年以上ない方はその期間が5年を満たすこととなった日を迎えた方が対象となります。

ポイント

中小企業のうち多くの会社は60歳定年、そして再雇用として、65歳までの継続雇用としています。再雇用時に賃金が低下する場合がありますが、その賃金の差を埋めるために「高年齢雇用継続基本給付金」を活用するという流れになります。

今回の支給率の引き下げの対象となる従業員に対しては、事前に制度の内容を説明しておきましょう。シニア社員の活用は大企業を中心に進んでおります。中小企業でも、定年再雇用者の賃⾦制度、定年制度の再構築が必要です。

③ 障害者雇用における除外率の見直し

除外率は2025年4月1日以降、現在より除外率設定業種ごとに10ポイント引き下げられ、以下のようになります。

除外率設定業種除外率
・非鉄金属第一次製錬 ・精製業 ・貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)5%
・建設業 ・鉄鋼業 ・道路貨物運送業 ・郵便業(信書便事業を含む)10%
・港湾運送業 ・警備業15%
・鉄道業 ・医療業 ・高等教育機関 ・介護老人保健施設 ・介護医療院20%
・林業(狩猟業を除く)25%
・金属鉱業 ・児童福祉事業30%
・特別支援学校(専ら視覚障害者に対する教育を行う学校を除く)35%
・石炭 ・亜炭鉱業40%
・道路旅客運送業 ・小学校45%
・幼稚園 ・幼保連携型認定こども園50%
・船員等による船舶運航等の事業70%

ポイント

障害者を雇用しなければならいない会社には、毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告の義務があります。また障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者選任」の努力義務があります。経営者、人事担当者は、自社の必要な雇用人数を把握し、雇用を確保しなければなりません。

障害者の雇用義務人数=(従業員数-従業員から控除できる人数(従業員数×除外率))×2.5%(2025年4月 法定雇用率)になります。

④ 育児休業給付延長時の審査厳格化

育児休業の延長・再延長時には、一定の要件を満たした場合、雇用保険の育児休業給付金についても支給が延長されることになっています。2025年4月1日より、確認書類の追加など延長申請時の審査がより厳格になります。

ポイント

本改正後はハローワークにて、より厳格な審査が行われることになりますので、人事担当者は該当する育児休業取得者へ早めに案内をするなどの対応を行いましょう。

⑤ 基本手当の給付制限の短縮

2025年4月から自己都合退職者の給付制限期間が原則2ヶ月から1ヶ月に短縮されます。また教育訓練等の実施により自己都合退職者の給付制限が解除されます。

ポイント

人事担当者は退職時の説明や案内文の変更が必要です。正確に改正の内容を理解しておく必要があり、退職者に必要な情報を提供しましょう。

⑥ 出生後休業支援給付金の創設

2025年4月から雇用保険の被保険者とその配偶者の両方が育児休業を取得した場合に、現行の「出生時育児休業給付金」「育児休業給付金」に上乗せして支給されます。子の出生直後の一定期間以内に雇用保険の被保険者とその配偶者の両方が、14日以上の育児休業取得する場合、28日間を上限に給付率13%相当額が支給されます。これにより、育児休業給付金とあわせて支給給付率合計80%となります。

ポイント

「出生後休業支援給付」の創設により、今後、男性労働者の育児休業取得はますます広がっていくものと思われます。中小企業としても取り組まなければならない項目です。経営者、人事担当者は、育児休業取得の意向確認の際には、制度の説明や周知をする必要があります。新制度のため、手続き時に混乱しないように、支給要件などをしっかりと把握し施行に備えましょう。

⑦ 育児時短就業給付金の創設

雇用保険法の制度改正により、新たな育児に伴う給付として「育児時短就業給付金」が創設され、2025年4月1日より施行されます。2歳未満の子を養育する短時間勤務者に賃金の10%を上限として給付金を支給します。ただし、育児休業前の賃金と比べ、育児時短勤務後の賃金の減少幅が10%に満たない場合は、休業前賃金を超えないように給付率の調整が行われます。

ポイント

「育児時短就業給付金」の創設により、中小企業の人事労務担当者の負担が増大します。短時間勤務時の賃金、制度を整備しましょう。また内容を把握するとともに手続き等を押さえておきましょう。

⑧ 仕事と育児の両立支援

2025年4月から段階的に施行される育児・介護休業法の改正は、仕事と育児の両立のための法改正となります。

主な改正内容は、「所定外労働制限を小学校就学前までの子を養育する従業員に拡大(改正前は3歳に満たない子を養育する従業員が対象)」、「子の看護等休暇の目的拡充(入園式や卒園式等の子の行事参加等を追加)」、「子の看護等休暇取得時に対象となる子の範囲を小学校3年生修了まで延長」、「子の看護等休暇を取得できる対象者に入社6ヶ月未満の従業員も追加(労使協定で除外できる対象者から撤廃)」、「育児休業取得状況の公表義務が課される企業規模を従業員数1,000人超から300人超に拡大」となります。

ポイント

育児に関する法改正は何度も行われています。過去の法改正に対応しているか等、自社の就業規則等を改めてご確認いただき、4月に向けて就業規則等の改定や新たに義務化される環境整備等に対応していくことが必要です。

⑨ 仕事と介護の両立支援

2025年4月から段階的に施行される育児・介護休業法の改正のうち、介護に関する主な事項は、「介護休暇を取得できる対象者に入社6ヶ月未満の従業員も追加(労使協定で除外できる対象者から撤廃)」、「介護の申出があった場合の両立支援制度の周知・意向確認の義務化」、「介護に直面する前の早期(40歳等)での両立支援制度等の情報提供の義務化」、「介護休業・介護両立支援制度等に関する研修実施や相談窓口設置等の雇用環境整備の義務化」になります。

ポイント

今回の法改正により、勤続6カ月未満の労働者も介護休暇の取得が可能となります。まずは、自社の社員の介護状況の把握が必要です。あわせて会社の介護支援制度を適切に把握する必要があります。また、研修制度や社内での相談窓口の設置の体制構築も必要となります。4月に向けて就業規則等の改定や新たに義務化される環境整備等に対応していくことが必要です。

⑩ 一般事業主行動計画の見直し、男性の育児休業取得率の公表

常時雇用する労働者数100人超の企業には、一般事業主行動計画の策定・届出、外部への公表、社内周知が義務付けられていますが、2025年4月1日以降に開始又は変更する行動計画では、PDCAサイクルの確立(育児休業取得状況や労働時間の把握、改善点の分析、新たな行動計画の策定又は変更)、育児休業取得状況・労働時間の状況に関する数値目標の設定が義務付けられます。

また、男性の育児休業取得率の公表義務づけが従業員300人超の会社に対象拡大されます。

ポイント

現状を把握し、できることから取組を始めることが重要です。厚生労働省の「一般事業主行動計画の策定・届出等について」を参考にするのがお勧めです。

⑪ 教育訓練休暇給付金創設

2025年10月1日より、教育訓練休暇給付金が新設されます。雇用保険の被保険者が教育訓練のための休暇を取得したときに、給付金が支給される制度です。

ポイント

中小企業のうち教育訓練に関する制度を取り入れている会社はほとんどありません。この機会に長期休暇を想定した無給の教育訓練休暇制度の導入を検討しましょう。リスキリングやキャリア形成でも有効になりますし、会社も社員のスキルアップによる生産性の向上が期待できます。制度を導入した場合は、就業規則の整備、周知等必要になります。

⑫ ⼦どもの年齢に応じた柔軟な働き⽅実現のための措置等が義務化

2025年10月から子の年齢に応じた両立支援に対するニーズへの対応として、新たに、事業主に育児期の柔軟な働き方を実現するための措置を講ずることが義務づけられます。

内容は、「3歳から小学校就学前まで子を養育する従業員を対象に、[時差出勤、テレワーク、短時間勤務、 保育施設の設置、新たな休暇等]の中から2つ以上の措置導入」、「導入した措置の個別の周知・意向確認」です。

ポイント

従業員の意⾒‧希望を募って講じる措置を決定します。従業員が利用しやすい制度、会社で無理のない制度、自社にあった制度を導入することが重要です。そのうえで、 就業規則を整備して従業員に周知します。その後、対象となる従業員に個別の周知‧意向確認をするという対応が必要です。

2025年10月施行の内容ですが、「柔軟な働き方を実現するための措置の導入要件に「過半数労働組合等への意見聴取」があります。育児介護規程の改定が必要ですので、早めの対応が必要です。

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