コラム

令和6年10月からの短時間労働者の適用拡大について

2020年5月29日に成立した「年金制度の機能強化の為の国民年金法の一部を改正する法律」により、令和4年10月から、被保険者数101人以上の企業等(特定適用事業所)で働く短時間労働者の社会保険加入の義務化がされました。
特定適用事業所に該当する適用事業所の企業規模は段階的に拡大され、令和6年10月からは更に厚生年金の被保険者数が「51人以上」の企業等で働く短時間労働者の社会保険加入が義務化されます。

今回は、用語の解説と問い合わせが多いQ&Aをご紹介いたします。

短時間労働者とは?
下記4項目、全て該当した従業員のことをいいます。
① 週の所定労働時間が20時間以上
② 月額賃金が8.8万円以上
③ 2ヶ月を超える雇用の見込みがある
④ 学生ではない
所定労働時間に残業等は含む?
契約上の所定労働時間であり、臨時に発生した残業時間は含みません。
月額賃金とは?

基本給及び諸手当を指します。ただし残業代・臨時的な賃金は含まれません。

例)賞与、割増賃金、最低賃金に算入しないことが定められた賃金
雇用契約が2ヶ月の場合は、適用拡大の対象外?

 雇用契約が2ヶ月以内であっても下記A・Bに該当する場合は、契約当初からの社会保険の加入となります。

A. 就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」または「更新される場合がある旨」が明示されている場合。

B. 同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が更新時により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合。

学生はすべて対象外?

下記は被保険者の対象となります。

  • 休学中の学生
  • 卒業見込み証明を有し、卒業前に就職し、卒業後も同一事業所に勤務予定者
  • 大学の夜間学部、高校の夜間、定時制の過程
4分の3基準を満たさない短時間労働者は、要件のうちいずれか1つ該当すれば被保険者資格を取得しなければならないのか?

要件全てを満たした場合に、被保険者資格を取得します。

入社時は「短時間労働者」として被保険者資格を取得したが、雇用契約の変更により正社員等と同じ「一般被保険者」として適用要件を満たすこととなった場合、手続きは必要?

短時間労働者であるかないかの区別の変更があった場合、当該事実が発生した日から5日以内に「健康保険・厚生年金保険被保険者区分変更届/厚生年金保険70歳以上被用者区分変更届」を日本年金機構に届ける必要があります。
(健康保険組合管掌の健康保険は、組合へ届出が必要です)

業務の都合等により、恒常的に労働時間が増加し、月額の賃金も8.8万円以上になった場合は?

連続する2月において、労働時間が増加し、月額8.8万円以上となった場合、引き続いて同じ状態が続くことが見込まれる場合は、実際の賃金が8.8万円以上となった月の3月目の初日に被保険者の資格取得となります。この場合の8.8万円以上の判定は時間外労働に対して支払われる賃金も含めて算定します。

短時間労働者が月額8.8万円を下回った場合は資格喪失の手続きをする?

原則として雇用契約が見直され、月額8.8万円を下回ることが明らかになった場合、資格喪失の手続きを行います。雇用契約の見直しがなく、常態的に8.8万円を下回る状況が続くことが確認できた場合は、実態を踏まえて資格喪失することとなります。

年金受給者で厚生年金に加入すると一部または全額が支給停止となってしまうが、対象になるか?

短時間労働者の要件を満たせば年金の受給があっても資格取得する必要があります。

現在、扶養内の場合でも短時間労働者に当てはまるか?

扶養内(130万円未満)であっても、短時間労働者の要件を満たしたら加入となります。
なお、認定要件は変更ありません。

ダブルワークしている者も対象か?

各事業所単位で、被保険者資格の取得要件を判断します。

二か所以上の事業所で働いていて、それぞれの会社で社会保険の加入要件を満たしている場合、従業員はどちらか一方の事業所を選択して届け出(被保険者所属選択・二以上事業所勤務届)る必要があります。

社会保険料の算定においては、両社の賃金を合算し、それぞれの賃金額に応じて按分計算し給与から保険料を控除します。

特定適用事業所とは?

従業員数51人以上の企業のことをいいます。

従業員の数え方は?

従業員数は下記①②の「現在の厚生年金保険の適用対象者」の合計人数です。
① フルタイムの従業員数
② 週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数(パート・アルバイト含む)
※法人は法人番号が同一の全事業所を合計、個人事業所は個々の事業所ごとにカウントします。
※70歳以上で健康保険に加入している従業員はカウントから除外します。

毎月入退社が激しく、51人の増減がある場合は?

1年間のうち6ヶ月間以上51人を超えることが見込まれる場合をいいます。

従業員人数51人以下が続くようになった場合は?

特定適用事業所に一度なった場合、従業員の減少により要件から外れた場合でも継続されます。

ただし、使用される被保険者(厚生年金の被保険者及び70際以上の使用される者)の3/4以上の同意を得て届出(特定適用事業所不該当届)をした場合非該当となります。

「手取りが減ってしまう」と従業員さんは懸念されると思いますが、 社会保険に加入するメリットは下記が挙げられます。

厚生年金保険の加入メリット

年金(老齢・障害・遺族)が2階建てとなり、受け取れる年金額が増える。

病気・ケガ等で障害と認定された場合、障害年金の給付が増えるうえに保証の範囲も広がる。

健康保険の加入メリット

病気・ケガ等で働けない期間、傷病手当金が支給される。

産前産後休業中は出産手当金が、出産時には出産育児一時金が支給される。

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