コラム

育児休業取得状況の公表義務の拡大

2025年4月に施行される育児・介護休業法の改正により、男性労働者の育児休業取得率等の公表義務が課せられる企業規模が「常時雇用する労働者が1,000人を超える企業」から、「常時雇用する労働者が300人を超える企業」へと拡大されます。

厚生労働省の調査によると、2023年度の育児休業取得率は女性が84.1%、男性が30.1%となっており、女性の育児休業取得率が高い一方で男性の育児休業取得率は依然として低いままとなっています。

男性の育児休業の取得を促進し、企業に対してその取得状況の公表義務を課すことで、男性の育児休業取得に対する企業や社会の認識を変え、より積極的に育児に関わる環境づくりが進むことが期待されています。

常時雇用する労働者のカウント方法

雇用形態を問わず、以下の労働者が「常時雇用する労働者」としてカウントされます。

  • 期間の定めなく雇用されている者
  • 過去1年以上引き続き雇用されている者
  • 雇入れの時から1年以上の雇用が見込まれる者

公表しなければならない内容

企業が公表しなければならない内容は以下①、②のいずれかの割合です。

育児目的休暇とは

育児目的休暇とは小学校就学前の子の育児を目的としたもので、「育児を目的とするもの(配偶者出産休暇や子の行事参加のための休暇など)」であることが就業規則等で明らかにされている休暇制度で、育児・介護休業法第24条にて努力義務として定められています。 子の看護休暇、介護休暇及び労働基準法第三十九条の規定による年次有給休暇として与えられるものを除き、出産後の養育について出産前において準備することができる休暇を含みます。

具体的には、次のような場合に使用されることがあります。

  • 子どもの病気や急な体調不良の対応
  • 保育園や学校行事への参加
  • 子どもの送迎や生活サポート
  • その他育児に関連する日常的なサポート

有給・無給は会社規定によって定めることができますが、一般的には育児目的休暇は無給の場合が多いです。

公表方法

公表は、一般の方が閲覧できる方法で行うことが求められます。

企業ホームページに掲載を行う場合は「会社概要」や「企業情報」ページに、育児休業の取得状況を掲載する方法が一般的です。その他厚生労働省が運営するウェブサイトである「両立支援のひろば」での公表も推奨されています。

公表期限

厚生労働省からは事業年度終了後おおむね3ヵ月以内に、公表する年度の直前の事業年度(公表前事業年度)の状況についての公表が求められています。

つまり、決算時期が3月の企業の場合、2024年度(2024年4月~2025年3月)の男性育休取得状況を2025年6月末までに公表する必要があります。その後は、毎年度末ごとに取得状況を集計し、初回の公表時期と同時期に更新・公表する形が続きます。

男性の育児休業取得状況の公表義務の拡大は、企業の育児休業取得促進を図り、社会全体の意識改革を促すものです。

男性の育児休業取得が進むことで、男女共同参画がさらに進み、家庭内での育児・家事分担がより公平になっていくことが期待されます。今後企業には、改正に対応するため育児休業取得状況の正確な集計、データ管理体制の整備や育児休業制度の見直し、公表体制を整える等の準備が求められることになります。

一般事業主行動計画

今回改正のあった男性労働者の育児休業取得率等の公表義務とは別途「次世代育成支援対策推進法」に基づき、常時雇用する従業員が101人以上の企業には行動計画の策定・都道府県労働局への届出・一般への公表・従業員への周知を行うことが義務付けられています。
100人以下の企業において計画策定は努力義務となっており、任意で策定・実施することが可能です。

一般事業主行動計画は、企業が労働環境の改善や従業員の福利厚生を向上させ、従業員の仕事と子育ての両立を図るために策定する計画のことです。

具体的には、以下のような項目が含まれます。

仕事と育児の両立支援

育児・介護休業法の規定を上回る制度として育児目的休暇や育児支援制度を整備し、男女問わず仕事と育児を両立できる環境を作ること

フレックスタイムやテレワーク

柔軟な働き方を推進し、従業員のワークライフバランスを支援するための措置

※「制度の導入」を目標とする場合は、関係法令で定めている最低基準を目標とするの ではなく、それを上回る水準とする必要があります。

計画内容は事業主の主観的な考えではなく、従業員が抱えている実際のニーズや課題を十分に理解し、把握して策定することが重要です。従業員の立場に立ち、彼らの声をしっかりと聞くことで、より適切なサポートや改善策を講じることができます。

また、一般事業主行動計画を策定することで、企業は社会的に評価され、従業員の満足度向上にもつながる可能性があります。

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