「無期転換ルール」Q&A
有期労働契約を何度も更新し続けたら無期労働契約になる⁉
知らなかったでは済まされない“無期転換ルール”について、Q&A方式で見ていきましょう。
- “無期転換ルール”とはどういうものですか?
- 同一の使用者(会社など)と労働者の間で、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)が更新されて通算5年を超えたとき、労働者の申し込みにより期間の定めの無い労働契約(無期労働契約)に転換できるルールのことを言います。
- パートやアルバイトも無期転換ルールの対象になりますか?
- 対象となる労働者は、契約社員やパート、アルバイトなどの名称を問わず、原則として有期労働契約が通算して5年を超える全ての労働者です。
- 通算5年を超えたら自動的に無期労働契約に転換されますか?
- 通算5年を超えた労働者が「申し込み」をすることにより、無期労働契約が成立します。
- 「申し込み」は書面でしなければなりませんか?口頭ではダメですか?
- 法律上は、口頭での申し込みでも無期労働契約は成立します。ですが、後々のトラブルを防ぐためにも申し込みは書面で行った方が良いでしょう。
- 無期転換の申し込みを行った場合、すぐに無期労働契約に転換されるのですか?
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申し込み時の有期労働契約が満了する日の翌日から無期労働契約が始まります。
例えば、平成30(2018)年4月1日に開始した有期労働契約を更新して令和5(2023)年3月31日に通算契約期間が5年となる労働者が、令和5(2023)年4月1日から1年間の有期労働契約を締結し、この期間中に無期転換の申し込みをした場合、令和6(2024)年4月1日から無期労働契約となります。
- 会社は労働者の無期転換の申し込みを拒否することはできますか?
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無期転換の申し込みをする権利を持つ労働者が無期転換の申し込みを行ったときは、使用者はこれを承諾したとみなされ、申し込みの時点で既に、申し込み時の有期労働契約満了日の翌日に開始する無期労働契約が成立したことになります。(労働契約法第18条1項)したがって、会社は労働者方の無期転換の申し込みを拒否することはできません。
- 同じ会社に既に5年を超えて勤務していますが、無期転換の申し込みのことを知りませんでした。今からでも申し込みをすることができますか?
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有期労働契約が通算して5年を超える場合、その契約期間の初日から末日までの間いつでも、無期転換の申し込みをすることができます。また、無期転換の申し込みをせずに有期労働契約を更新した場合、更新した新たな有期労働契約の初日から末日までの間いつでも、無期転換の申し込みをすることができます。
- 同じ会社で5年を超えて働いていますが、異動により職種や業務内容が何度か変わっています。この場合、契約期間は通算されますか?
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無期転換の申し込みは、「同一の使用者との間」で有期労働契約を更新し、通算して5年を超えて勤務している場合に権利が発生します。職種や業務内容が変わっていても、同じで会社であれば契約期間は通算されます。なお、「同一の使用者」とは、事業場単位ではなく、法人単位、個人事業主単位で判断します。
- 契約更新時に契約期間が6か月から1年に変わった場合、無期転換はいつからになりますか?
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例えば、平成30(2018)年4月1日から同年9月30日までの有期労働契約を結び、その後、平成30(2018)年10月1日から1年間の契約を締結して更新を繰り返している場合、
令和4(2022)年10月1日から令和5(2023)年9月30日までの労働契約をもって通算機関が5年を超えることになるので、令和4(2022)年10月1日に無期転換申込権が発生、この1年間に申し込みがあった場合には令和5年10月1日に無期転換となります。
この場合、就労期間が5年を経過する前に無期転換申込権が発生します。
- 3年の有期労働契約の場合、無期転換の時期はどうなりますか?
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例えば、平成30(2018)年4月1日から令和3(2021)年3月31日までの3年間の労働契約を結び、この契約を更新して令和3(2021)年4月1日から令和6(2024)年3月31日までの労働契約を結んだ場合、令和3(2021)年4月1日からの契約期間中に通算契約期間が5年を超えるため、令和3(2021)年4月1日に無期転換申込権が発生します。
この間に申し込みがあった場合、更新した有期労働契約の終了日の翌日である令和6(2024)
年4月1日から無期労働契約となります。この場合、就労期間が最初の3年を超えた時点で無期転換申込権が発生することになります。
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契約期間と契約期間に途切れがあっても通算されるのでしょうか?
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同一使用者の間で有期労働契約が締結されていない期間が一定以上続いた場合、それ以前の契約期間は通算されません。このことを“クーリング”といいます。クーリングの具体的な内容は以下の通りです。
【無契約期間の前の通算契約期間が1年以上の場合】
・無契約期間が6か月以上の場合
無契約期間が6か月以上あるときは、それより前の有期労働契約期間はクーリングにより通算されません。
・無契約期間が6か月未満の時
無契約期間が6か月未満の場合、前後の有期労働契約期間はクーリングされず、通算されます。【無契約期間の前の通算契約期間が1年未満の場合】
下図のように、無契約期間の前の通算契約期間の半分より無契約期間が長ければ、無契約期間の前の有期労働契約期間はクーリングされ通算されません。その場合、無契約期間の次の有期労働契約から、通算契約期間が再びカウントされます。
クーリングされるケース
無契約期間の前の通算契約期間 | 契約がない期間(無契約期間) |
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2ヶ月以下 | 1ヶ月以上 |
2ヶ月超~4ヶ月以下 | 2ヶ月以上 |
4ヶ月超~6ヶ月以下 | 3ヶ月以上 |
6ヶ月超~8ヶ月以下 | 4ヶ月以上 |
8ヶ月超~10ヶ月以下 | 5ヶ月以上 |
10ヶ月超~ | 6ヶ月以上 |
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6か月更新のパートタイマーとして3年間勤務したのち退職し、3か月後にまた同じ会社で働き始めました。以前勤務していた3年間の通算契約期間にカウントされますか?
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無契約期間の前の通算契約期間が1年以上あり、無契約期間が6か月未満なので通算されます。
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派遣社員でも無期転換の申し込みはできるのでしょうか?この場合、派遣元・派遣先どちらに申し込むのでしょうか?
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派遣社員でも派遣元の企業と有期労働契約を結んでいれば、同一の派遣会社との有期労働契約が通算5年を超えた場合に、無期転換の申し込みができます。この場合、派遣先ではなく、派遣元に無期転換の申し込みをします。
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会社(使用者)は、通算契約期間が5年を超える有期労働契約を従業員と結ぶ場合、無期転換の申し込みができることを説明する必要がありますか?
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令和6(2024)年4月1日以降、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新の際に、使用者は「無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)」を労働者に対して書面で明示することが義務化されました。初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する場合は、更新の都度、明示が必要となります。
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無期転換の申し込みを行った場合、正社員になるのでしょうか?給与などの労働条件は変わるのでしょうか?
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無期転換後の雇用区分(正社員など)については、会社ごとに制度により異なります。
給与や待遇等の労働条件は、就業規則や個々の労働契約に別段の定めがある場合を除き、直前の有期労働契約と同一となります。なお、令和6(2024)年4月1日からは、無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新時に、使用者は「無期転換後の労働条件」を労働者に対して書面で明示することが義務化されています。
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無期転換する従業員の為に、あらかじめ就業規則を整備する必要がありますか?
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無期転換ルールでは、無期転換後の契約期間は有期から無期に変更されますが、それ以外の給与などの労働条件は、就業規則や個別の労働契約に別段の定めがない限り、直前の有期労働契約の条件を引き継ぎます。したがって、無期転換後の従業員にどのような労働条件を適用するのか検討したうえで、別段の定めをする場合は、その旨を就業規則に規定する必要があります。
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就業規則等により、無期転換後は勤務地や職務を限定しないものとし、正社員と同等の責務とすることは問題ないでしょうか?
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適法に定められた就業規則や個別の労働契約により「別段の定め」として、申し込み時点の有期労働契約の内容とは異なる労働条件を定めることは可能であり、この「別段の定め」には、待遇の引き上げとそれに見合った職務の範囲や責任の程度の変更も含まれます。ただし、実際には必要性がないにもかかわらず、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって定められた「別段の定め」は、労働契約法第18条の趣旨により就業規則の制定・変更に合理性が認められない、と判断される可能性があります。
なお、令和6(2024)年4月1日から、すべての労働者に対して、雇入れ直後の就業場所・業務の内容に加えて、就業場所と従事すべき業務の「変更の範囲」も明示することが義務化されました。
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無期転換した場合、本人から退職の申出がない限り雇い続けなければならないのでしょうか?上限を定めることはできませんか?
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雇用の上限を定めるのは「定年」のみ可能であり、それ以外はできません。無期転換後の労働条件として定年を適用する場合には、就業規則等に明示する必要があるでしょう。
なお、定年の定めをする場合には、定年は60歳を下回ることはできず、定年を定めた場合には、その定めを「退職に関する事項」として、就業規則に必ず記載しなければなりません。
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60歳定年後に有期労働契約で継続雇用している従業員が65歳(通算5年)を超えて契約更新した場合、無期転換できますか?
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定年後に引き続き雇用している有期労働契約者についても、同様に無期転換ルールが適用されます。ただし、適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働労働局長の認定を受けた場合には、特例として、その事業主に定年後引き続き雇用される期間は、無期転換申込権が発生しないという制度もあります。
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60歳定年制の企業で、62歳に有期労働契約が通算5年を超える場合も無期転換できますか?
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この場合も同様に無期転換ルールが適用されます。有期労働契約が5年を超えて更新された場合、定年年齢を理由に無期転換の申込を拒むことはできません。
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有期労働契約の更新上限を5年とし、雇止めすることはできないでしょうか?
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有期労働契約において、更新上限を設けることが直ちに法律違反とはなりません。
使用者と労働者との間で合意がされれば、労働契約として成立します。 契約締結後に、労働者の合意により就業規則において更新上限を新たに設ける場合、労働者の自由な意思に基づいて合意することが必要となります。
一方、労働者の合意によることなく就業規則の変更によって更新上限を新たに設ける場合には、使用者側がその就業規則を労働者に周知させ、かつ、その定めの内容が合理的である必要があります。また、雇止めの有効性については、雇止め法理(労働契約法第 19 条)に基づき最終的には司法判断されることとなり、有期労働契約の満了前に使用者側が更新年限や更新回数の上限などを一方的に定めたと しても、雇止めをすることは許されない場合もあります。 なお、令和 6(2024)年4月 1 日から、有期労働契約の締結時及び契約更新時に、更新上限がある場合 はその内容を明示することが義務化されました。この更新上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ(更新上限の新設・短縮をする前に)説明することが必要になります。
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雇止めが無効になるのはどのような場合ですか?
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雇止めの有効性については、労働契約法第 19 条の「雇止め法理」に基づき判断され、有期労働契約が次の①、②のいずれかに該当する場合に、使用者が雇止めをすることが、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、その雇止めは無効とされます。
①解雇と社会通念上同視できると認められるもの
②労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの例えば、無期転換ルールの適用を免れる意図をもって、
・無期転換申込権が発生する有期労働契約の満了直前に、一方的に、使用者が更新年限や更新回数の上限などを就業規則上設け、当該ルールに基づき、無期転換申込権が発生する前に雇止めをする場合
・契約更新上限を設けた上で、形式的にクーリング期間を設定し、期間経過後に再雇用することを約束した上で雇止めを行う場合等については、雇止めをすることが、客観的に合理的な理由を欠くものとされる可能性があります。なお、上記の①②に該当するかどうかは、その雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無などを総合的に考慮して個別事案ごとに判断されます。